赤崁楼

赤崁楼は、台湾の台南市中西区に位置し、その歴史は17世紀にまで遡ります。別名、赤嵌楼、紅毛楼とも呼ばれるこの場所は、元々オランダ人によって築かれた「プロヴィンティア」（普羅民遮城）という城砦でした。1652年の郭懷一事件後、オランダ人は防衛拠点としてこの城を建設し、その後、鄭成功による台湾占拠によって東都承天府と改名され、台湾全島の行政中心地となりました。現在では、文化部により国定古跡に指定されています。

歴史的背景

台南市は、台湾本島において最も早く漢民族によって開発が進められた地域です。当時の台南西部は遠浅の海が広がり「台江内海」と呼ばれていました。内海の西側には砂州が広がり、現在の安平一帯には西拉雅平埔族台湾社が居住していました。台江東岸は平原が広がり、平埔族赤崁社の居住地となっていました。明代の文献では、台江西岸を「台員」、東岸を「赤崁」と記しています。

明代中期には、倭寇が台南を拠点に活動し、大陸沿岸や台湾原住民が被害を受けていました。これに対し、明は討伐軍を派遣し、漢民族と原住民間の交流が生まれ、漢人移民が台湾に押し寄せ、集落を形成するようになりました。

オランダ人による普羅民遮城

1624年、澎湖を拠点としていたオランダは、明との講和が成立したことにより、澎湖を放棄し、代わりに台湾南部に上陸しました。彼らは商館や砲台を築き、台江西岸の一鯤鯓沙洲（現在の安平）に「ゼーランディア」（熱蘭遮城、現・安平古堡）を築城しました。このゼーランディアは台湾統治の中心となり、その東側には「台湾街」（現在の延平街一帯）と「普羅民遮街」（現在の民権路）が建設されました。「台湾第一街」と呼ばれるようになった台湾街は、台湾で最も繁栄した商業地として栄え、普羅民遮街は台湾初のヨーロッパ式の都市計画に基づくものでした。

オランダ統治下では、漢民族移民や平埔族に対する厳しい統治が行われたため、1652年に漢人の不満が爆発し、郭懷一事件が発生しました。この事件を鎮圧した後、オランダ人は再発防止のため、普羅民遮街の北方に「プロヴィンティア」を建設しました。周囲約141m、城壁高さ10.5mの城砦は、水源や食料が備蓄され、有事の際の防衛拠点として機能しました。漢民族はこの城砦を赤崁楼あるいは紅毛楼と呼んでいました。

鄭氏による東都承天府

1661年4月、鄭成功はオランダ人に通訳として雇われていた漢人、何斌の案内で鹿耳門から台江内海を越え、プロヴィンティアを攻撃しました。鄭成功は城砦を攻略し、普羅民遮城を東都明京とし、承天府を設置しました。ここに9ヶ月滞在した後、鄭成功はゼーランディアを攻略し、38年にわたるオランダ統治を終結させました。

オランダ投降後、鄭成功はゼーランディアを「安平鎮」と改名し、自身の居城としました。また、プロヴィンティアは東都承天府として台湾の最高行政機関となりました。しかし、鄭成功が病没した後、世子の鄭経は1664年に東都を廃止し、「東寧」と改名して「東寧国王」を自称しました。承天府が廃止されると、赤崁楼は火薬貯蔵庫として使用されました。

清代以降の変遷

1721年、朱一貴が清朝に対して反乱を起こすと、赤崁楼の鉄製門額が武器鋳造の材料として使われました。その後、人為的な破壊、風雨による侵食、地震などにより赤崁楼は荒廃し、周囲の城壁のみが残る状態となりました。

19世紀後半になると、大士殿、海神廟、蓬壷書院、文昌閣、五子祠などが赤崁楼の跡地に再建され、かつての姿を取り戻しました。日本統治時代には、海神廟、文昌閣、五子祠は病院や医学生の宿舎として利用されました。

1921年、台湾総督府によって大士殿の解体修復が行われた際、プロヴィンティア時代の堡門が発見され、東北部からはオランダ時代の砲台跡が発掘されました。その後、歴史館が設置され、戦後には更に修復が進められ、台南市立博物館へと発展しました。1974年には大規模な修復が行われ、現在の外観となりました。そして1983年には文化部によって国定古跡に指定され、今日に至ります。

赤崁楼は、その歴史を通じて、台湾の多様な文化や歴史的変遷を物語る重要な場所となっています。

関連項目

台員
赤崁
安平古堡
郭懷一
歳星 - 公式擬人化キャラクター

脚注

（脚注は省略）

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズには、赤崁楼に関するカテゴリがあります。

もう一度検索