赤松町 (神戸市)

赤松町：神戸大学の南に広がる歴史と住宅地の調和

神戸市灘区に位置する赤松町は、昭和7年（1932年）9月、それまでの八幡、高羽の各地区を統合して誕生しました。神戸大学に隣接する住宅地として知られ、1丁目から3丁目までの区域から構成されています。北は六甲台町、東は寺口町と篠原北町、南は曽和町と隣接し、郵便番号は657-0061です。

令和2年（2020年）の国勢調査によると、赤松町の世帯数は320世帯、人口は730人で、男性351人、女性379人の構成となっています。静かで落ち着いた住宅街として、多くの住民が暮らしています。

赤松町の由来：歴史の謎と真実

赤松町という町名は、意外な歴史的経緯に由来しています。明治41年（1908年）、高羽村の山中で発見された建物遺構や石垣跡が、室町時代の赤松氏に関連する赤松城の跡ではないかとの推測が、郷土史家の間で浮上しました。この説に基づき、神戸大学構内には「赤松城之址」の標柱が建てられました。そして、昭和7年9月、この地は赤松町と命名されたのです。

しかし、後の調査によって、この地にあったのは実際には赤松城ではなく、一王山十善寺の跡であることが判明しました。真の赤松城は、播磨国佐用郡の苔縄城にあったことが確認されています。では、なぜこの地に「赤松」の名が付いたのでしょうか？

その理由を探る鍵は、戦国時代の戦術にあります。赤松氏をはじめとする多くの武将は、寺院を城砦として利用することがありました。赤松円心が摩耶山城を拠点とした際、一王山十善寺も一時的に利用された可能性があり、その際に戦火によって焼失したと推測されています。そのため、赤松氏と何らかの関わりがあったこの地が、赤松町と名付けられたと考えられます。

歴史の解釈は時代とともに変化し、新たな事実が明らかになることで、地名に秘められた物語もまた、新たな解釈を必要とします。赤松町という地名は、そのような歴史的経緯の積み重ねの上に成り立っていると言えるでしょう。現在では、静かな住宅街として、神戸大学の学生や教職員、地域住民が穏やかに暮らす場所となっています。

参考資料

神戸史学会 編『神戸の町名 改訂版』神戸新聞総合出版センター、2007年。ISBN 978-4-343-00437-6
灘区役所広報相談課 編『灘区の町名』灘区役所広報相談課、1976年

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