赤道反流

赤道反流：西から東へ流れる、生命豊かな海流

赤道反流は、北緯3度から10度の間で、北赤道海流や南赤道海流とは反対方向に、西から東へと流れる海流です。その流速は1～3ノットと比較的速いものの、厚さは100～200メートルと比較的浅いのが特徴です。

この海流の発生メカニズムは、貿易風によって引き起こされる海面の水位差に起因すると考えられています。貿易風は、赤道付近で東から西へ吹き付ける風であり、この風によって西側の海水が東側に比べて盛り上がり、水面に傾斜が生じます。大西洋では約14cm、太平洋では約63cmもの水位差が生じると計算されており、この水面傾斜が赤道無風帯における赤道反流の原動力となっているのです。

赤道反流の内部構造は複雑です。横断面を見ると、表面では北から南へ、水温躍層付近では南から北へと流れる横方向の環流が存在しています。さらに、反流の北縁では表層で海水が発散し下層で上昇する一方、南縁では表層で収束し下層で沈降するという、特徴的な流れが見られます。特に北縁の上昇流は、栄養豊富な深層水を表層へと運ぶため、プランクトンや魚類の繁殖にとって非常に重要な役割を果たしています。豊かなプランクトンは、食物連鎖の基礎となり、多様な海洋生物を育む豊かな生態系を支えているのです。

赤道反流は太平洋で最も顕著に発達しており、西から東までほぼ連続して流れています。近年では、同様の反流が南半球にも存在することが明らかになり、赤道付近の海流系は赤道に対してある程度の対称性を有しているという見方もあります。

一方、大西洋では東部で特に顕著に発達していますが、インド洋では状況が異なります。インド洋では、夏に卓越する南西季節風によって季節風海流が支配的となり、北赤道海流と共に赤道反流は消滅してしまうことが知られています。このように、赤道反流は海域によってその発達や消長に違いがあり、海洋の様々な要因が複雑に絡み合って形成されていることが分かります。

赤道反流の研究は、海洋の循環や生態系を理解する上で非常に重要です。今後さらに研究が進展することで、気候変動や海洋環境の変化に対する理解が深まり、より正確な予測や保全対策に繋がるものと期待されています。

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