赤頭巾ちゃん気をつけて

『赤頭巾ちゃん気をつけて』の概要

『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、日本の作家・庄司薫の代表的な小説であり、1969年に発表されました。物語は、日比谷高校の生徒である庄司薫（本作の主人公）の日常を軽快な文体で描いており、学生運動の影響を受けた1960年代の日本社会が背景となっています。この作品は、そのユーモラスな書き方や生き生きとしたキャラクター描写が評価され、ベストセラーとなっただけでなく、映画化もされました。作品は同年の第61回芥川賞を受賞し、多くの読者に愛され続けています。

物語のあらすじ

語り手である庄司薫は、都立日比谷高校の三年生。彼は学校群制度が導入される前の最後の世代にあたります。物語は1969年2月9日の日曜日、彼の日常的な出来事を饒舌に語る形式で進行します。1968年の暮れに起きた東大紛争の影響で大学入試が中止され、薫は大学に進学することに悩みながら、願書提出期限を迎えます。そこで彼は、大学を受験しないという決断を下します。

薫の家庭環境はやや特殊で、兄弟は独立しており、父はゴルフに出かけて不在、家には母だけがいます。また、薫には幼馴染の由美という女の子がいるものの、彼女は他の学校に進学しています。物語の中で彼は、亡くなった犬や親指の怪我について思い悩みながらも、社会や文化についてのさまざまな思弁を巡らせます。

登場人物との対話や電車での移動、街を歩く描写を通じて、彼の心情や社会への疑問が織り交ざり、生き生きとした青春の悩みが描かれています。特に由美との対話や手をつなぐシーンは、彼の心の内面を反映しており、彼の決断の重大さが際立ちます。

倫理的・社会的背景

作品は、学生運動や受験競争といった1960年代の社会的背景を深く反映しています。当時の日本には、大学入試を巡る社会的緊張があり、さらに東大紛争による影響も大きかったです。薫の葛藤は、彼だけでなく、多くの若者が直面していたものであり、価値観の転換を求める時代の声が色濃く表れています。

文学的影響と批評

ここで興味深いのは、庄司作品の一部には、アメリカの作家J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』との類似点があるという指摘が多くあります。この作品の発表当初から、薫とサリンジャーの主人公の設定や文体における共通点が取り沙汰され、「盗作」や「贋作」といった批評も存在しました。反論する庄司は、自己の作品が他者に与える影響について触れつつ、自己の独自性を主張しました。この議論は、彼の作品の文学史における位置づけについての考察にもつながっています。

まとめ

『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、日本文学における重要な一作であり、庄司薫の独特の語り口によって学生の青春像を描く傑作です。多くの層の読者に受け入れられ、映画化されたことからもその影響の大きさが伺えます。この作品を通じて、時代の風潮や個人の内面を垣間見ることができるのは、庄司文学の魅力の一つです。

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