超人ウルトラベースボール

1989年 10月27日、カルチャーブレーンよりファミリーコンピュータ向けに発売された野球ゲームソフトです。後に多くの続編が展開される「超人ウルトラベースボール」シリーズの記念すべき第1作にあたります。アメリカ合衆国では『Baseball Simulator 1.000』というタイトルでリリースされました。シリーズ全体のプロデューサーは阿迦手観屋夢之助氏が務めています。

ゲームの特色

本作の操作体系は一般的な2Dアクションゲームに近いスタイルを採用していますが、最大の特徴は「超人野球」と呼ばれる独自のシステムです。ゲーム内に登場する「ウルトラリーグ」に所属する選手たちは、通常の野球や他のスポーツゲームでは決して見ることのできない、まさに人間離れしたプレイを繰り出します。これらの特殊能力は「ウルトラポイント」という固有のポイントを消費することで発動します。

具体的な「超人技」の例としては、ピッチャーが投げる球速が時速200km/hを超える「ライトニングボール」や、バットを粉砕するほどの破壊力を持つ「ファイアーボール」、さらにはボールが空中で分裂する「分身魔球」や、投げた瞬間ボールが消える「消える魔球」、予測不能な軌道で蛇行する「スネークボール」といったバラエティ豊かな魔球が存在します。中には、打者に当たるとバラバラになるような描写を含む速球（ゲーム上は通常の死球扱い）や、任意に球速をコントロールできる「アクセルボール」なども登場します。

バッターが放つ「秘打」も同様に常識外れです。打球が地面に落ちると爆発する「爆発打法」、低い弾道で一直線に飛び、捕球を試みた野手を打球ごとフェンスまで引きずってしまう「ミサイル打法」、打球がジグザグに不規則なバウンドをする「イレギュラー打法」、さらには打球が円を描いて長時間滞空する「フジヤマ打法」や、着弾時に地震を起こして守備側の選手を硬直させる「大地震打法」などがあります。打者の能力を一時的に大幅に向上させる「ハイパー打法」や、打球にバットの破片を付けて野手が捕球できなくする「流星打法」といったユニークな技も存在します。

守備においても、高いジャンプでホームラン性の打球をも捕らえる「ロケットジャンプ」や、長い距離を滑るように移動して捕球する「スーパースライド」、特殊な打球を捕球可能にする「ミラクルキャッチ」など、超人的なアクションが可能です。選手の移動速度や返球速度を向上させる技もあります。

ウルトラポイントはファミコン版ではチームごとに初期値が固定されていましたが、後のシリーズ作品では試合前に自由に設定できるようになり、無制限にすることも可能になりました。

チームと球場

本作には、CENTURY LEAGUEとPARADICE LEAGUEという架空のリーグにそれぞれ6球団ずつ、合計12球団が登場します。加えて、本作の大きな特徴である「超人技」を使用可能な6球団で構成される「ウルトラリーグ」が存在します。ウルトラリーグには、野球のOB選手チーム、外国人助っ人チーム、さらには野球以外のスポーツ選手チーム、野球アニメや特撮に登場するキャラクターの連合チームなど、非常にユニークなコンセプトのチームが集結しています（権利上の都合から、チーム名や選手名は架空のものに変更されています）。ウルトラリーグのチームのみが「超人技」を使用可能です。また、プレイヤー自身が選手名や能力、使用できる技を自由に設定できるエディットチーム機能も搭載されていました。

試合が行われる球場も個性的です。「えっぐ」のようなドーム球場から、大阪城を望む「なにわの」、宇宙空間を舞台にした「あすとろ」、海辺の「よこすた」（場外ホームランが海に着水したり、船に当たったりする演出がある）など、バラエティ豊かな6種類の球場が用意されており、スコアボード直撃のホームランでスコアボードが破壊されるといった演出も盛り込まれていました。

評価とシリーズ展開

本作は特に海外で高く評価されました。エレクトロニック・ゲーミング・マンスリー（EGM）の1989年度アワードでは「ベストスポーツテーマビデオゲーム」に選ばれ、「スポーツ自体に自由を与えた」と称賛されています。また、1990年には他のゲーム雑誌からも国際的な賞を受賞しました。アメリカのゲーム情報サイト1UP.comは、本作をファミコンの「隠れた宝石」の一つとして挙げ、システムの面で最高の野球ゲームの一つであると評価しています。

一方で、スーパーファミコンで発売された『ウルトラベースボール実名版』の国内評価（ファミ通クロスレビュー）では賛否が分かれました。操作性やボールの軌道が当時の人気野球ゲーム『ファミスタ』に似ている点や、選手データを保存できるモードなどが肯定的に評価された一方で、超人プレーがあまりにハチャメチャすぎて興醒めする、野球ではないような感覚になるといった否定的な意見も見られました。実名選手が登場するのに超人プレーによって不自然さが生じているという指摘や、演出面の物足りなさを指摘する声もありました。

本作を起点とするシリーズは、その後スーパーファミコンを中心に展開しました。魔球や秘打の種類が増えたり、ウルトラポイントの設定自由度が増したりした『スーパーウルトラベースボール』や、実名選手を起用した『ウルトラベースボール実名版』シリーズが複数発売されました。中には超人要素を撤廃してタイトルを変更した『プロ野球スター』や、従来の野球アクションではなくカードバトル形式となった『超人ウルトラベースボールアクションカードバトル』（ニンテンドー3DS）といった変化球的な作品も登場しましたが、後に再びアクション野球ゲームとしての『超人ベースボールスタジアム』シリーズ（ニンテンドー3DS）として復活を果たしました。また、NINTENDO 64やゲームボーイアドバンス向けに開発が発表されながらも、発売中止となったタイトルも存在します。海外でもNES版やスーパーファミコン海外版が発売されており、一部のタイトルは現代のゲーム機向けダウンロードサービス（Wii U バーチャルコンソール、プロジェクトEGG、Nintendo Switch Onlineなど）でも配信されています。

『超人ウルトラベースボール』は、「超人野球」という独創的なコンセプトによって、野球ゲームに新たな可能性を提示し、多くのプレイヤーに強いインパクトを与えた、シリーズの基礎を築いた作品と言えるでしょう。

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