越訴方

越訴方の歴史と役割

越訴方（おっそかた）は、日本の歴史において、特に鎌倉幕府と室町幕府の時代に存在した重要な訴訟機関です。この機関は、主に裁判の再審や異議申し立てに関する審理を専門に行っていました。越訴方の成立は文永元年（1264年）に遡り、従来の引付衆が担当していた初審を越訴専用に扱う部署として設立されたのです。

越訴方の構成と機能

越訴方は、越訴頭人と呼ばれる責任者を中心に、引付衆の中から選ばれる2～3名の越訴奉行（おっそぶぎょう）で構成されていました。この越訴頭人は、初代には金沢実時や安達泰盛が任命されており、一般的には引付衆の中でも最上位に位置する武士が選ばれる傾向がありました。一方、越訴奉行は、ある特定の事件や審理に基づいて選出され、越訴頭人の指導のもとで実務を担当していました。

越訴方の役割は、訴訟における異議申し立てを正当かつ公平に審理することでした。このため、越訴方は当時の社会において重要な司法機関として機能し、民間からの訴えに応じていました。

政治的変遷と越訴方の廃止

北条氏が得宗となってからは、訴訟権限が中央集権的に掌握される傾向が見られました。これに伴い、越訴方は次第にその存在意義を失っていきました。特に、永仁の徳政令が施行された際には、越訴方は廃止され、再編成されることとなるのです。これに対して翌年の徳政令廃止と共に、二階堂行藤と摂津道厳が越訴頭人に任命され、その機能が復活されました。

しかし、正安2年（1300年）には、得宗北条貞時の命により御内人5名が越訴を担当することになり、越訴方の権限はより一層得宗による支配を強めていくこととなりました。

室町時代における越訴方の変化

その後、室町幕府の初期においても越訴方と越訴奉行が設置されましたが、詳細な機能や役割については不明な点が多いのが現状です。南北朝時代の末期に至っては、越訴方の組織や役割は消滅したと考えられており、時代背景や政治状況の変化に伴い、伝統的な法律制度も変革を余儀なくされたことが窺えます。

参考文献

• - 笠松宏至「越訴方」「越訴奉行」『国史大辞典 2』（吉川弘文館 1980年）
• - 稲葉伸道「越訴奉行」『日本歴史大事典 1』（小学館 2001年）

越訴方は、日本の歴史の中で訴訟及び司法制度の動向を理解するための貴重な要素を提供しており、その変遷は当時の政治的な力関係とも密接に関連しています。

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