趙欣伯

趙欣伯（ちょう きんはく）：激動の時代を駆け抜けた政治家・法学者

趙欣伯は、清朝末期から中華民国、満洲国、そして汪兆銘政権という激動の時代を生き抜いた政治家であり、刑法を専門とする法学者でもありました。彼の生涯は、時代の波に翻弄されながらも、常に政治の中枢に関わり続けた複雑なものでした。

初期の活動：北京政府から奉天派へ

清朝末期、趙欣伯は禁衛軍の衛兵としてキャリアをスタートさせました。その後、省立天津北洋大学で学び、辛亥革命後は北京文明新劇団で女形を演じるという異色の経歴を持ちます。また、この頃に国民党に加入しますが、二次革命の失敗により大連に逃れ、劉笑痴と名を改め、日本人向けの中国語教師として生活しました。

1915年、趙欣伯は日本に留学し、1920年に明治大学法科を卒業、法学士の称号を取得しました。その後、陸軍大学校で中国語講師を務めた後、1925年には明治大学に博士論文『刑法過失論』を提出し、法学博士号を授与されました。1926年に帰国すると、東三省巡閲使署の法律顧問に就任します。これは、公使館付陸軍武官だった本庄繁が張作霖に推薦したことによるものでした。翌年には、北京政府外交部条約修改委員会委員に任ぜられます。1928年に張作霖爆殺事件が発生すると、趙欣伯は奉天省に戻り、法学研究会を組織し、雑誌『法学研究』を刊行しました。

満洲国での活動：立法院長から失脚へ

満洲事変勃発後の1931年、趙欣伯は奉天地方維持委員会の組織に参画し、遼寧省政府の機能を代行する決定に関与しました。その後、奉天市長に就任しますが、まもなく最高法院東北分院院長に異動となります。1932年の満洲国建国最高会議では、立憲共和制の採用を主張し、帝制採用派と対立しました。

満洲国が正式に成立すると、趙欣伯は初代立法院長に任命されました。1933年には憲法制度調査委員も兼任し、来日しますが、滞在が長期化したことで、1934年には満洲国監察院から「綱紀問題」に関する調査を受けることになり、下半身麻痺や腎臓炎も患っていたことから、立法院長と憲法制度調査委員を罷免されました。この人事により、立法院は機能を停止し、準備機関に格下げされることになりました。

その後の活動と最期

1937年、趙欣伯は宮内府顧問官に任命されますが、これもまもなく辞任し、東京に居住します。1939年に帰国し、汪兆銘政権成立後は華北政務委員会で法律顧問を務めました。戦後、漢奸として国民政府に逮捕され、1948年からは病状悪化のため入院生活を送ります。そして、1951年に62歳でこの世を去りました。

趙欣伯は、その生涯を通じて、政治と法律の世界で重要な役割を果たしました。しかし、彼の足跡は、激動の時代に翻弄された複雑なものであり、その評価は今日に至るまで議論の対象となっています。

彼の経歴は、清末から中華民国、満洲国、そして汪兆銘政権という、中国近代史における主要な政治変動と深く結びついており、その波乱に満ちた生涯は、歴史の複雑さを象徴していると言えるでしょう。

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