趙飛燕

趙飛燕（ちょう ひえん）

趙飛燕は、前漢の成帝の皇后です。元々は宜主（ぎしゅ）と名乗っていました。

略歴

正史である『漢書』における趙飛燕の記述はごくわずかですが、稗史ではその美貌が詳細に描写されています。彼女は、楊貴妃と並び称されるほどの美しさを持っており、「環肥燕瘦（かんぴえんそう）」という言葉は、ふくよかな楊貴妃とスリムな趙飛燕の美を表現するために生まれました。

彼女の出自は卑しいものでしたが、幼い頃に長安にたどり着き、「飛燕」と名乗って歌舞の腕を磨きました。その後、元帝の娘である陽阿公主（ようあこうしゅ）の家の歌妓となり、その美貌が成帝の目に留まり後宮に迎え入れられます。後宮に入ってからは、成帝の寵愛を一身に受け、妹の趙合徳（ちょうごうとく）も昭儀（しょうぎ）として入宮することになります。

成帝は趙飛燕を皇后にすることを望みますが、太后の強い反対に遭います。しかし、鴻嘉3年（紀元前18年）に許皇后（きょこうごう）を廃位し、永始元年（紀元前16年）に趙飛燕はついに皇后の座を手に入れます。

しかし、綏和2年（紀元前7年）に成帝が崩御すると、状況は一変します。成帝の突然の死は不審がられ、妹の趙合徳は自殺に追い込まれます。趙飛燕自身も危機を迎えますが、自分の子供がいなかったため、哀帝（あいてい）の即位を支持します。これにより、哀帝が即位すると皇太后としての地位を与えられます。

元寿2年（紀元前1年）に哀帝が崩御し、平帝（へいてい）が即位すると、趙飛燕は後ろ盾を失います。王莽（おうもう）によって宗室を乱したとして罪に問われ、皇太后から孝成皇后（こうせいこうごう）へと降格され、さらに庶民に落とされた後、自殺しました。

備考

妹の趙昭儀は、成帝の他の妃が生んだ複数の男子を殺めたとされています。これは後世に「燕啄皇孫（えんたくこうそん）」と呼ばれました。姉の趙飛燕の方が有名であるため、そのように呼ばれていますが、実際には趙飛燕がこの事件に関与したという記録はありません。哀帝の時代に大臣たちが趙昭儀を批判した際にも、趙飛燕については言及されていません。そのため、妹との連帯責任以外はあまり問えないと評されることが多いです。

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