正史

正史とは

正史（せいし）とは、主に国家によって公式に編纂される歴史書のことです。特に東アジアでは、正史はその国の歴史の流れを記録し、教育の重要な資源とされます。代表的な例として、中国の「二十四史」が挙げられ、これらはその国の政治的正当性を示す役割を持つことが一般的です。

正史の特徴

正史という名称は時に「正しい歴史」と誤解されがちですが、実際にはその意味は「正式」とされています。つまり、正史はその時代の政府が作成した文書であり、政府の意思や観点が色濃く反映されているのです。そのため、野史（民間で編纂された歴史書）に比べて、正史の内容は歴史的資料として一定の信憑性を持っていますが、都合の悪い事実が省かれたり、改変されることもあり、完全に正確であるとは言い切れません。

正史の信憑性

正史の信憑性については古くから議論がありました。清の歴史学者、趙翼は『二十二史箚記』の中で、正史同士が矛盾する場合があると指摘し、従って史料を慎重に検討して実態を判断すべきだと述べました。彼によれば、正史は野史をもとにして作られたものであり、採用されなかった史料も存在します。そのため、正史を基盤にしつつ、矛盾を解決するためには、自らの判断が必要です。

現代の歴史学においては、正史の内容が疑わしいとされることも多く、特に考古学の成果が古代史の研究において重要視されるようになっています。たとえば、日本最古の正史である『日本書紀』は、物理学や年代測定技術によりかなりの虚構が含まれていることが指摘されています。また、中国の正史も王朝の正統を主張するために都合良く作成されたことが批判されています。

中国の正史

中国において、正史は次第に国家の事業として編纂されるようになりました。初期の歴史書は主に個人の意図によるものが多かったですが、唐代以降、正史は国家事業として継続して編纂されました。唐では『晋書』や『梁書』などが編纂され、正史としての位置づけが確立しました。しかし、編纂過程では政治的思惑が多く作用し、歴史が語られる際の信憑性が損なわれることがしばしば起きました。

また、正史は時代の経過と共に文学性が失われ、形式的な記載が主流となり、重要な歴史的事実が見過ごされたり、記載が簡略化されることもありました。このような背景から、正史は歴史的文書としての信頼性を欠く場合もあります。

日本の正史

日本においては、7世紀前半に編纂された「帝紀」「旧辞」が正史の始まりとされています。その後、8世紀前半に編年体形式で完成した『日本書紀』を皮切りに、続いて『続日本紀』などの歴史書が編纂されました。これらの正史は、国家が公式に編纂したこともあり、一般的に信憑性はあると考えられていますが、同様に政治的意図が反映されることがあります。

明治維新後にも多くの歴史書が編纂されましたが、国家の思惑が絡むことから、純粋な歴史記述としては十分な評価を得られなかったケースも見受けられます。正史の執筆は、その時代の政府のための宣伝とも言える側面があります。

まとめ

正史は、国家の公式な歴史書として重要な役割を果たしてきましたが、常にその信憑性や正確性が論じられる対象でもあります。歴史の真実を知るためには、正史だけでなく、野史など多角的な視点からの研究が重要です。正史の理解は、歴史を学ぶ上での基盤となるため、今後もその重要性は変わらないでしょう。

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