踊る海賊

『踊る海賊』

『踊る海賊』（原題：The Pirate）は、1948年にアメリカ合衆国で製作・公開された色彩豊かなミュージカル映画です。この作品は、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）の豪華なプロダクションとして知られ、ミュージカル映画の巨匠ヴィンセント・ミネリが監督を務めました。当時のMGMを代表する人気スター、ジュディ・ガーランドとジーン・ケリーが初めて本格的に共演した作品としても特筆されます。

企画背景と原作

本作は、劇作家S・N・バーマンが手掛け、1942年にブロードウェイで初演された戯曲『海賊』を基にしています。ブロードウェイ版では名優リン・フォンタンとアルフレッド・ラントが主演し、好評を博しました。MGMはこの舞台劇をミュージカル映画として脚色することを企画。映画化にあたり、ブロードウェイの伝説的な作曲家コール・ポーターに新たな楽曲の作曲が依頼されました。ポーターは、劇の持つコメディ要素とロマンチックな雰囲気に合わせた、陽気で時に情熱的な楽曲群を書き下ろしています。監督には、すでに『若草の頃』などで手腕を発揮していたヴィンセント・ミネリが抜擢され、彼の芸術的なビジョンが映画全体のスタイルに大きく影響を与えました。

主要キャスト

物語の中心となるヒロイン、歌とロマンティックな夢に憧れるマヌエラを演じたのは、スターとしてのキャリアを確立しつつあったジュディ・ガーランドです。一方、そのマヌエラを翻弄する魅力的な旅芸人、セラフィンを演じたのは、ダイナミックなダンスで観客を魅了するジーン・ケリー。二人のスターは、スクリーン上で息の合った歌唱とダンスを披露し、この映画の見どころの一つとなっています。その他の重要な配役としては、マヌエラを自分のものにしようとする実力者ペドロ・バルガスをウォルター・スレザクが演じました。また、マヌエラの保護者であり、物語にユーモアとリアリティをもたらすおばのイネス役をグラディス・クーパーが演じています。さらに、ゲストダンサーとして、当時最高のタップダンサーとして知られたニコラス・ブラザーズが出演し、圧巻のパフォーマンスを見せています。

スタッフと製作

製作は、MGMミュージカルを牽引した名プロデューサー、アーサー・フリードが手掛けました。脚本は、フランシス・グッドリッチとアルバート・ハケットの夫婦コンビが担当。コール・ポーターが作曲した楽曲を、映画音楽として編曲し、オーケストラを指揮したのは音楽監督のレニー・ヘイトンです。撮影監督にはハリー・ストラドリングが名を連ね、鮮やかなテクニカラー映像を美しく捉えました。編集はブランチ・シューエルが担当。美術デザインはセドリック・ギボンズとジャック・マーティン・スミス、装置はエドウィン・B・ウィリスが担当し、エキゾチックな舞台設定を作り上げました。衣裳デザインは、アイリーン、バーバラ・カリンスカ、トム・ケオーの共同作業によるもので、特にバーバラ・カリンスカはミュージカル映画に相応しい華やかで印象的な衣裳を多数手掛けています。録音はダグラス・シアラーが担当しました。

評価と遺産

『踊る海賊』は、公開当時、その技術的な完成度、特に鮮烈なテクニカラーの色使いと、主演二人のエネルギー溢れるパフォーマンス、そしてコール・ポーターの楽曲が高く評価されました。音楽監督のレニー・ヘイトンは、コール・ポーターの楽曲を見事に映画音楽へと昇華させた功績が認められ、第21回アカデミー賞においてミュージカル映画編曲賞にノミネートされました。この映画は、MGMが誇るミュージカル映画製作能力を示す作品の一つであり、後に続く数々の名作への道を切り開きました。ジュディ・ガーランドとジーン・ケリーという稀有な組み合わせによるパフォーマンスは、現在でも多くの映画ファンやミュージカル愛好家から高く評価されています。

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