車運丸

車運丸について

車運丸（しゃうんまる）は、鉄道院のもとで建造された青函航路で初めての車両渡船であり、厳密には動力を持たないため「車両ハシケ」として知られています。青函航路における車両輸送の草分け的存在であり、主に新造または転属した鉄道車両を北海道へ運送していました。

車両ハシケの誕生

1905年8月1日、北海道鉄道の小樽-南小樽間が開通し、函館が北海道鉄道の玄関口となりました。鉄道の国有化が進む中、青函航路が開設されたのは1908年3月7日。この航路は、本州青森と北海道函館を結ぶ重要な交通路として発展し、その後の北海道開拓を支えました。しかし、当時の運搬は全て貨物船によるもので、鉄道車両の大量運送には多くの手間とコストがかかりました。

1911年には、宮本組が早期の貨車航送航路を開設し、その成功が鉄道院の視線を引き寄せました。車両解体や再組立てにかかる不便を解消し、車両の輸送をスムーズにするため、車運丸の建造が決定され、1914年12月10日に就航しました。

船体構造の特徴

車運丸は単甲板の構造を持ち、船首部分には高くなった船首楼が設置され、操舵室や手動揚錨機などが備わっていました。広い露天甲板があり、3本の船内軌道が設けられ、鉄道車両をそのまま積載することが可能でした。この設計により、機関車や客車、貨車の輸送が効率よく行えるようになりました。

運航と試行錯誤

運航は曳船によって行われ、初期には定期的な貨物船による曳航がなされましたが、抵抗が大きく運航に支障を来しました。効果的な曳船の導入が進められ、結果的には桜島丸が曳船として最も長く使用されました。運航は不定期で、荒天時には中止される場合もあり、時には車両を海に投棄して避難することもありました。

1925年、翔鳳丸型による本格的な車両航送が始まると、車運丸の役割は次第に終了し、火薬類や危険物専用の航送船に変更されました。最終的には1927年6月に青函航路からの運航が終了し、累計で多くの車両を輸送しました。

最後の時期

運航後、車運丸は函館に係船され、一時陸軍に貸し出されたり、兵器輸送に使用されました。その後、1936年には売却されることになります。また、青森と函館の間に設置された可動橋により、海上と陸上の軌道をつなぎ、積卸し作業が効率よく行われました。

函館港内「カーフロート」との関係

函館港では、鉄道の整備が遅れたため海運が主流でしたが、車運丸により徐々に鉄道と海運の連携が強化されました。結果として新たに建造された「カーフロート」が運航を開始し、戦後も使用され続けました。

まとめ

車運丸は、青函航路の歴史において重要な役割を果たしました。その設計や運航方法は、以降の車両輸送の礎となり、日本の交通網の発展に寄与しました。

もう一度検索