軍事的プロフェッショナリズム

軍事的プロフェッショナリズムとは、軍隊における専門的な知識と技能、そして職業としての自律性を重視する考え方で、特に将校団に見られる傾向を指します。この概念は、軍人を単なる兵士ではなく、専門的な知識と技術を持つ職業人として捉えることを意味します。

概要

軍事的プロフェッショナリズムの概念は、18世紀から19世紀にかけて、プロイセンをはじめとするヨーロッパ各国の将校団で形成されたとされています。サミュエル・P・ハンティントンの研究によれば、この時期に軍事学を共通の知的基盤とする専門職団体が生まれ、職業軍人としての倫理観が確立されていきました。軍事的プロフェッショナリズムを確立した将校団は、高度な軍事専門知識を持つ組織として、軍隊を組織的に管理する役割を担うようになりました。この流れは、モルトケやシュリーフェン、ゼークトなどに代表されるドイツ軍の将校団へと引き継がれ、軍事組織の効率化と専門化を促進しました。

軍事的プロフェッショナリズムは、一般的に三つの側面から理解することができます。

1. 団体性: 協同的で官僚的な構造を持つ組織であること。
2. 専門性: 特別な研究や教育を通じて高度な専門知識を習得すること。
3. 責任: 専門職としての自己規制と国家との契約への服従という職業的な責任を果たすこと。

これらの側面は、軍人から政治的な要素を取り除き、軍事的な方法によって軍隊の戦闘効率を高めることに特化した専門家であることを要請します。

現代における軍事的プロフェッショナリズムの変化

しかしながら、現代の軍事組織において、軍事的プロフェッショナリズムは一様な形態を示しているわけではありません。ハンティントンは軍事的プロフェッショナリズムが軍隊に固有な普遍的性格であると主張しましたが、ジャノヴィッツは核兵器の出現によって軍事的プロフェッショナリズムが根本的に変容したと指摘しています。ジャノヴィッツの見解では、近代においては軍隊が国家の安全保障を担ってきた一方で、現代においては軍隊が社会的な価値観や規範を逸脱した軍事行動を行うことは許されなくなりました。これは、軍事的プロフェッショナリズムにおける専門性が、軍事行動を専門知識によって正当化する政治的な側面を持つためです。

また、発展途上国の政治システムにおいては、軍隊が政治的な影響力を行使する事例も多く見られます。このような状況から、現代における軍事的プロフェッショナリズムは、古典的な捉え方だけでなく、政治システムと軍隊の関係という観点からも考察する必要があると言えるでしょう。

まとめ

軍事的プロフェッショナリズムは、軍隊の専門性と自律性を高める上で重要な概念です。しかし、現代社会においては、その概念が変化し、政治的な側面も考慮する必要が出てきました。軍隊が社会の中でどのように位置づけられるべきか、軍事的な専門知識と政治的な責任をどのようにバランスさせるべきか、という課題は、現代社会においてますます重要なものとなっています。

参考文献

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