軍人勅諭

軍人勅諭について

『軍人勅諭』は、1882年1月4日に明治天皇から陸海軍の軍人に向けて下賜されたもので、正式名称は『陸海軍軍人に賜はりたる敕諭』です。この勅諭は、当時の普通の詔勅が漢文調であったのに対し、平仮名を交えた和文調で書かれており、特異な特徴を持っています。

歴史的背景

この勅諭が起草された背景には、当時の日本が抱えていた社会的混乱が影響しています。西南戦争や自由民権運動といった激しい社会情勢があり、軍部の士気を高めることが急務となっていたため、山縣有朋の指導のもと、西周が草案を起こし、福地源一郎や井上毅らが加筆修正を行いました。そしてこの勅諭は、軍人に対して忠誠心や礼儀、武勇、義理、質素という五つの徳目を求め、政治への不関与を強調しています。

主な内容

全体は約2700字から成り、前文において天皇が軍人の大元帥であることを示し、軍人が上官の命令を受け入れることが皇の命令に従うことを意味すると伝えています。また、実行されることによって喜びが広がり、それが国民全体に祝福をもたらすと述べています。

五つの徳目は以下のように定義されています。
1. 忠節 - 政治に惑わされず、軍人としての職務に専念すること。
2. 礼儀 - 他者との関係を重んじ、適切な行動を求めること。
3. 武勇 - 戦場における勇気と実行力。
4. 信義 - 約束や義務を果たす誠実さ。
5. 質素 - 無駄な贅沢を避け、必要なことに集中すること。

特に「忠節」については、当時の社会情勢を考慮し、軍人が政論に影響されてはいけないことを明確に述べています。実際、軍人には選挙権が与えられませんでした。

軍人勅諭に関する周辺情報

この勅諭には「御名御璽」といった印鑑が押されていない点も話題にされることがあります。陸海軍に直接下賜された形式を取っており、そのため「御名」のみが記されることが多いです。特に陸軍では「御名」を「おんな」と読んでいた点も特異です。

また、軍人勅諭はその後の日本においても影響を及ぼし続けました。教育勅語と共に廃止されることになりますが、その精神は防衛政策や教育において再評価されることもあります。

結びに

この勅諭は、ただの指示文ではなく、日本の軍人の行動規範を定義し、近代日本の軍事思想や倫理観に大きな影響をもたらしました。現在でもその内容を振り返ることは、当時の日本社会や軍隊の在り方を理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

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