軍靴のバルツァー

軍靴のバルツァー

『軍靴のバルツァー』は、中島三千恒による日本の漫画作品。2011年から『月刊コミックバンチ』で連載が開始され、その後『別冊少年マガジン』に移籍して現在も連載中です。緻密な描写と戦略的な展開が魅力で、多くのファンを魅了しています。

概要

物語の舞台は、19世紀後半のヨーロッパを彷彿とさせる架空の軍事国家「ヴァイセン王国」とその同盟国「バーゼルラント邦国」。帝国主義が隆盛を極める時代を背景に、戦車や飛行機といった近代兵器が登場しない世界で、騎兵、大砲、マスケット銃といった当時の兵器を用いた戦いがリアルに描かれます。

本作の特徴は、当時の訓練風景や兵器の操作方法などが丁寧に描写されている点です。武器だけでなく、食品や服装なども細密に描かれており、その徹底したリアリティが読者を物語の世界へと引き込みます。また、作中にはモデルとなったドイツ地方の文化（アイントプフ等）に関する解説も掲載されています。

ミリタリー作品、時代劇作品としての読み応えはもちろんのこと、国家間の複雑な関係や、国家総力戦へと向かっていく世界情勢を描き出すことで、クラウゼヴィッツの『戦争論』を彷彿とさせる深みも持ち合わせています。2024年6月時点で、累計部数は120万部を突破しています。

あらすじ

主人公は、ヴァイセン王国の軍人ベルント・バルツァー。第一次ノルデントラーデ戦役での戦功により異例の昇進を遂げた彼は、突如として同盟国バーゼルラント邦国の王立士官学校へ軍事顧問として派遣されます。

バーゼルラントは、ヴァイセンから見れば軍事後進国。時代遅れな装備や訓練に愕然とするバルツァーは、異国での困難に直面しながらも、士官学校の生徒たちを鍛え上げていきます。

訓練指導を巡る意見の相違から、アウグスト王子（後の大統領）の命令で囚人を使った模擬戦を指揮することになったバルツァーは、自身の戦術と最新装備を駆使して敵軍を圧倒し、その手腕をアウグスト王子に認められるようになります。

その後、労働運動の暴動鎮圧、ホルベック海軍との撤退戦、クーデターの勃発と篭城戦など、バルツァーは数々の事件に巻き込まれていきます。その中で、彼は軍人として、そして人間として成長していくのです。

登場人物

ベルント・バルツァー: ヴァイセン王国の陸軍少佐。バーゼルラント王立士官学校に軍事顧問として派遣される。冷静沈着な性格で、戦術眼に優れている。
ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト: バーゼルラント王立士官学校の訓練長で、バーゼルラント王室の第二王子。後に初代大統領となる。当初は粗暴な性格だったが、バルツァーとの出会いを通じて成長していく。
ディーター・シュトルンツ: 士官学校の生徒。砲兵科所属。実家は兵器工場を経営している。
パウル・ブライトナー: 士官学校の生徒。砲兵科所属。実家はパン屋。
ヘルムート・マルクス・フォン・バッベル: 士官学校の生徒。騎兵科所属。名門貴族出身の少女だが、男子として士官学校に入学する。
ユルゲン・ゲオルク・フォン・ブライトナー: 士官学校の生徒。騎兵科所属。ヘルムートの幼馴染。
ルドルフ・フォン・リープクネヒト: 元ヴァイセン陸軍第二近衛連隊長。バルツァーの友人だったが、クーデター未遂事件を起こして逃亡する。

主要な登場兵器

ヴァイセン王国軍正式小銃: ボルトアクション式の後装ライフル銃。
12ポンド野戦砲: バーゼルラント王立士官学校の砲兵科が運用している前装式野戦砲。
後装式多砲身“斉射砲”: ヴァイセン軍が運用している大型火器。ミトラィユーズがモデル。
組立式巨大臼砲: 士官学校攻略のために持ち込まれた攻城用の巨大臼砲。マレット臼砲がモデル。
コングリーヴ・ロケット: ヴァイセン王国臨時政府が樹立されたバーゼルラントへヴァイセン軍が攻め込んだ際に持ち込んだ兵器。

書誌情報

中島三千恒 『軍靴のバルツァー』新潮社〈BUNCH COMICS〉、15巻から講談社〈マガジンKC DELUXE〉、既刊19巻（2024年12月9日現在）
中島三千恒 『軍靴のバルツァー外伝 銀灰のユーリ』新潮社〈BUNCH COMICS〉、全2巻

ゲーム

* 三国志大戦: セガのアーケードゲーム。2020年12月2日より、本作のバルツァーをモデルにした盧植が登場。

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