転用石

転用石とは

転用石とは、戦国時代から江戸時代にかけての日本の城において、築城時に石垣の材料として、本来は別の目的で使用されていた石を再利用したものです。これらの石は、寺院や旧領主の墓地などから集められ、墓石、石仏、宝篋印塔、燈籠、五輪塔、石臼など、様々な形状のものが見られます。

転用石が使われた理由

転用石が使用された主な理由は、築城時に大量の石材が急遽必要になったにも関わらず、十分な量が確保できなかったことだと考えられています。しかし、それだけではなく、以下のような理由も指摘されています。

権力の誇示: 敵対する武将の墓石を使用することで、自らの権力を誇示する目的がありました。
城の守護: 墓石や石仏には、先祖代々の思念や信仰の力が宿ると考えられており、それらを石垣に組み込むことで城を守護する意味合いがありました。
* 領民との一体感: 領民から集めた石をあえて見える場所に配置することで、領主と領民が一体となって城を築いたという事実を誇示し、石を提供した領民への感謝を示す意味合いもありました。

転用石の具体例

転用石は、全国各地の城で見ることができます。特に多く使用されている城として知られているのは、福知山城や大和郡山城です。福知山城では、見える範囲だけでも450個から500個の転用石が確認され、再建工事時には約300個が発掘されました。また、姫路城乾小天守北側の石垣には石臼が、大坂城本丸石垣には近くの老婆が寄進したとされる石臼が見られます。酒船石遺跡や鬼の爼、鬼の雪隠などは、高取城の築城時に転用するために加工・移動された可能性が指摘されています。

転用石の配置

通常、石垣を築く際に、墓石や民家の礎石、石仏などを集めて使用することは、領主にとって必ずしも名誉なことではありません。もし、やむを得ない事情で転用石を使用しなければならないのであれば、通常は見えない部分、例えば地面や水面の下に配置するのが自然です。しかし、転用石は、城の正面中央部や角の部分など、人目につきやすい場所に配置されていることが多いです。これは、単に資材不足を補うためだけでなく、城の呪術的な強さを高めるためだったと考えられます。戦国時代には、城は物理的な強さだけでなく、多くの人々の力を結集したという事実に基づいた呪術的な強さも必要とされていました。そのため、領民から集めた石を石垣に使用することは、その現れだったと考えられます。

まとめ

転用石は、日本の城郭建築における独特な特徴の一つであり、単なる石材の再利用にとどまらず、当時の社会や人々の思想、文化を反映した興味深い遺物です。転用石を通して、戦国時代から江戸時代の歴史を垣間見ることができます。

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