輪王寺 (台東区)

輪王寺（両大師）

輪王寺は、東京都台東区の上野公園内に位置する天台宗の寺院です。一般には「両大師」の名で知られ、親しまれています。この名称は、慈眼大師として知られる天海と、慈恵大師（元三大師）として知られる良源の二人の高僧を祀っていることに由来します。

歴史

輪王寺は、かつて寛永寺の一部であり、開山堂または慈眼堂と呼ばれていました。上野公園一帯は、もともと寛永寺の広大な境内であり、現在の大噴水がある場所には根本中堂、東京国立博物館がある場所には本坊が位置していました。

1654年、後水尾天皇の第3皇子である守澄法親王が寛永寺の第3代貫主となり、日光山主も兼任しました。翌年には天台座主も兼ね、日光山の満願寺を輪王寺と改称し、自らが住持となりました。これにより、守澄法親王は天台座主、寛永寺貫首、日光山主の「三山管領宮」となり、「輪王寺宮」または「輪王寺門跡」と呼ばれるようになりました。以後、幕末まで皇族が関東に下向し、輪王寺宮を務めましたが、戊辰戦争後、15世輪王寺宮の公現法親王は還俗し、輪王寺宮は廃絶されました。

寛永寺の開山である天海は1640年に亡くなり、その4年後の1644年、現在の輪王寺の地に天海を祀る開山堂が建立されました。天海が深く崇敬していた良源も併せて祀られたことから、「両大師」と呼ばれるようになったとされています。

明治時代初頭の神仏分離令により、日光の輪王寺は一時的に満願寺という旧名に戻りましたが、1883年に再び輪王寺の寺号を名乗ることが許可され、1885年には「輪王寺門跡」の称号も復活しました。

開山堂は、1868年の上野戦争で焼失を免れましたが、1989年の火災で、1781年に再建された開山堂と1792年に再建された本堂が焼失してしまいました。現在の本堂は、1993年に再建されたものです。

境内

輪王寺の境内には、西側に1993年に再建された本堂、東側に輪王殿（斎場）があります。輪王殿の手前には、東京国立博物館の敷地から移築された寛永寺旧本坊表門（重要文化財）が建っています。本堂前の鐘楼に懸かる梵鐘は1651年の製作で、本堂前の参道左右に設置された銅燈籠は、もともと上野の大猷院（徳川家光）霊廟に奉納されていたものです。

文化財

重要文化財（国指定）

寛永寺旧本坊表門

切妻造り、本瓦葺きの薬医門で、潜門が付いています。通称「黒門」と呼ばれています。もとは寛永寺本坊の正門で、現在の東京国立博物館の敷地にありました。1882年に博物館が上野公園に移転・開館した際、博物館の正門として使用されました。関東大震災後、博物館の改築に伴い現在地に移築されました。門扉には上野戦争の際の弾痕が残っています。この門は、寛永寺入口にあった別の「黒門」（荒川区円通寺に移築）とは異なります。1946年11月29日に重要文化財に指定され、1989年の火災では焼失を免れました。

東京都指定有形文化財

木造天海僧正坐像

交通アクセス

上野駅公園口より徒歩約6分です。

参考文献

『日本歴史地名大系 東京都の地名』、平凡社、2002
松本和也『台東区史跡散歩』（東京史跡ガイド6）、学生社、1992

関連項目

寛永寺
輪王寺 (日光市)

外部リンク

開山堂 両大師
寛永寺 輪王殿

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