農民講道館農業短期大学

農民講道館農業短期大学

農民講道館農業短期大学（のうみんこうどうかんのうぎょうたんきだいがく）は、かつて埼玉県与野市円阿弥（現在のさいたま市中央区円阿弥付近）に存在した、日本の私立短期大学です。

概要

学校法人農民講道館によって運営された本短期大学は、1954年に開設され、1963年までの短い期間活動しました。開学当初から廃止に至るまで、設置学科は農科のみで、その入学定員はわずか30名と、極めて小規模な教育機関でした。また、当時としては珍しく、男子学生のみを対象としていた点も特徴の一つです。

前身と教育理念

本短期大学の源流は、内務官僚でもあった横尾惣三郎（よこお そうざぶろう）氏が1933年に設立した財団法人農民講道館にあります。この財団は、皇道精神を基盤としつつ、将来を担う農業技術者を育成することを目的としていました。

前身である財団法人農民講道館における教育は、座学よりも徹底した実践を重んじる独特なものでした。学生は実際の農作業に日々従事することで技術を習得し、休日も月に2日程度という農家の実生活に即した厳しい規律の中で生活を送りました。さらに、単なる技術習得に留まらず、「修身」の授業が必修とされるなど、農民として必要な道徳や精神を養うことにも力が注がれていました。この技術と精神の両立を重視する理念は、短期大学に改組された後も引き継がれたと言えます。

沿革

本短期大学およびその前身に関する主な出来事は以下の通りです。

1933年：横尾惣三郎氏により、財団法人農民講道館が創設されました。
1951年：財団法人農民講道館が学校法人農民講道館となりました。
1954年：3月20日付で、短期大学の設置が文部省（現：文部科学省）より正式に認可されます。同年4月1日には、農科（入学定員30名）を擁する農民講道館農業短期大学が開学しました。
1963年：3月30日をもって、農民講道館農業短期大学は正式に廃止されました。

教育内容と施設

設置されていたのは農科のみで、少人数制の教育が行われていました。将来的に教育分野への進路を希望する学生向けには、教職課程も設けられており、中学校教諭二級免許状（職業）および高等学校教諭免許状（農業）を取得することが可能でした。

学内には附属図書館があり、約6,500冊の図書資料が所蔵されていました。また、研究活動も行われており、例えば1955年頃には馬鈴薯の害虫であるハリガネムシの防除に関する研究試験が実施されたことが記録に残っています。

関係者

本短期大学の初代学長には、設立者である横尾惣三郎氏が就任し、その後は北野康雄氏が2代目の学長を務めました。教員としては伊東廣雄氏や水野秀夫氏などが在籍し、また、本短期大学の出身者には、のちに富士見市長を務めた浦野清氏などがいます。

閉学とその後

開学から約9年間という比較的短い期間で、農民講道館農業短期大学はその役割を終え、閉学しました。具体的な閉学理由は資料からは明らかではありませんが、小規模運営であることなど、様々な要因が影響した可能性が考えられます。かつての本短期大学の所在地は、現在、埼玉県さいたま市中央区の一部となっています。なお、系列の教育機関として、農民講道館農業高等学校が存在しました。

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