辻宣道

辻宣道の生涯と信仰

辻宣道（つじ のぶみち、1930年12月7日 - 1994年7月25日）は、日本のキリスト教界で重要な役割を果たした牧師であり、日本基督教団の元総会議長でもあります。栃木県足利市に生まれた彼は、宗教の家庭で育ちました。父の辻啓蔵も牧師であり、母は中田重治の次女でした。

幼少期と家族の悲劇

生まれて間もなく、辻は家族の悲劇に直面します。1935年、彼の3歳上の兄・重蔵が渡良瀬川で溺死するという出来事が起こりました。また、1939年には祖父の中田重治も亡くなりました。これらの出来事は、若い辻の心に深い傷を残すことになります。その後、家族は青森へ転任することになり、辻は新しい環境の中で成長しました。

信仰の形成

1942年、辻の父が宗教弾圧によって獄死するというさらなる悲劇が家族を襲いました。この経験は辻の信仰の基盤をさらに強固にする機会となりました。残された辻は、母京の支えを受けながら成長していきました。

1949年に彼は聖書農学園（現・千葉英和高等学校）神学部を卒業し、その後静岡県焼津市で開拓伝道を始めます。ここでの経験は彼の牧師としてのスキルを磨くだけでなく、地域社会への奉仕の重要性を実感する機会ともなりました。

牧会と社会活動

辻はその後、日本基督教団静岡草深教会で牧会を行い、その信念をもとに教会の発展に寄与しました。彼の考え方や教えは、信徒たちに深く感銘を与え、多くの人に影響を及ぼしました。特に、彼は社会との関わりを大切にし、信仰を具体的な行動に表すことの重要性を強調しました。

文筆家としての活動

辻宣道はまた、著述活動にも力を入れていました。彼の著書には『真理への招待』『教会生活入門』『教会生活の四季』『その時の祈り』『もうひとことだけ』『教会生活の処方箋』、さらには『嵐の中の牧師たち ホーリネス弾圧と私たち』など、キリスト教の教えや教会の実践についての考察が盛り込まれています。特に『天皇が死んだとき』という文章では、社会的な問題について思いを巡らせ、強いメッセージを送っています。彼は、天皇についての非難を受けた際にも、自らの家族が経験した悲劇を思い起こし、完全には誤りでないと感じたといいます。

晩年と遺産

辻は1994年に顎下腺癌によりこの世を去りましたが、その遺した教えや信仰は今もなお、多くの人々に影響を与えています。彼の人生は、苦難の中でも信仰を貫く姿、そして社会に貢献する姿勢を通じて、多くの教訓を我々に提供しています。辻宣道の生涯は、信仰と社会がどのように結びつくかを考える上で、今後も重要な教材となるでしょう。

もう一度検索