辻神

辻神（つじがみ）

辻神とは、道の交わる場所、特に辻（十字路や丁字路など）に潜むとされる妖怪、魔物の総称です。主に鹿児島県屋久島や兵庫県淡路島といった地域で伝承されており、淡路島では「辻の神」とも呼ばれます。

古来より、辻は現世と来世が交わる境界であるという考え方が存在しました。そのため、この世ならざる存在、すなわち魔物が現れやすい場所とされ、辻神もそのような場所に棲みつくと考えられてきました。「神」という名称がついていますが、一般的に信仰の対象となる神ではなく、人々に災厄をもたらす悪神として恐れられています。

辻神の伝承と石敢當

南九州から南島にかけての地域、特に鹿児島県を中心とした地域では、異界から現れるとされる辻神から身を守るため、辻、中でも丁字路に「石敢當（せっかんとう）」と呼ばれる魔除けの石を路傍に設置する風習が根強く残っています。

屋久島宮之浦の事例では、丁字路において、一方の道が他の道に突き当たる場所に家を建てると、辻神が家の中に侵入し、その家に住む人が病気がちになったり、不幸が続いたりすると信じられていました。そのため、突き当りの正面に長方形の石を石敢當として配置し、辻神の侵入を防いだとされています。

石敢當は、中国から伝わった風習が変化したものと考えられています。魔除けとしての役割を持ち、文字が刻まれているものや、単なる自然石であるものなど、様々な形態が存在します。

辻神と関連する概念

辻神は、境界に現れる存在という点で、他の妖怪や神々と共通する側面を持っています。例えば、道の神である道祖神や岐の神も、交通の要所や村の境界を守るとされています。また、辻占や辻祭といった、辻で行われる占い事や祭事も、辻という特殊な場所の持つ意味合いと深く関わっています。

近年では、通り魔のように、辻で無差別に人を襲う事件が発生することもありますが、これも辻という場所が持つ象徴的な意味合いと関連付けて語られることがあります。また、疫病神も、災厄をもたらす存在として、辻神と共通する側面を持っています。

辻神は、人々の生活と密接に関わる存在として、古くから恐れられ、様々な形で伝承されてきました。現代においても、辻を通る際には、安全を祈願し、慎重に行動することが大切です。

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