迅鯨型潜水母艦

迅鯨型潜水母艦

迅鯨型潜水母艦（じんげいがたせんすいぼかん）は、日本海軍が初めて保有した本格的な潜水母艦です。全体で2隻が建船され、母艦として中型潜水艦の整備や補給、指揮など、多岐にわたる機能を果たす多用途船として設計されています。

背景

日露戦争以降、日本海軍は潜水艦の開発に着手しました。しかし、当時の潜水艦は技術面や性能面で未熟さを抱えており、常に母艦の支援が求められました。1914年には既存の艦艇を改造して母艦として運用することが試みられましたが、その多くが旧式のため、潜水艦の運用に適した艦船が不足していました。

1915年以降、艦隊の演習には潜水艦が参加し始め、それに対応する母艦の必要性が高まっていきました。第一次世界大戦後、日本海軍は八八艦隊計画を立て、この構想の一環として迅鯨型潜水母艦の設計が行われました。この計画の元、迅鯨型は中型潜水艦の母艦として位置づけられ、必要な能力を備えることを目指しました。

設計と建造

当初の計画では迅鯨型の排水量は14,500トンを予定していましたが、ワシントン海軍軍縮条約の影響により、実際には常備排水量は7,000トンへと縮小されました。また、建造費用を抑えるため、商船を原型とすることが考えられていましたが、最終的には軍艦としての構造に変更されました。

迅鯨型は、三菱長崎造船所で建造され、進水後は中型潜水艦の整備や補給作業を行える能力を有しました。特に、艦体は香取型練習巡洋艦の設計を参考にし、機関部は廃艦となった戦艦の部品を再利用することで建造費用を抑えていました。これにより、迅鯨型は軽巡洋艦と同等の火力を持つことができました。

特徴と役割

迅鯨型潜水母艦は、潜水艦との連携が可能で、整備や居住環境、指揮能力を備えた多用途船です。従来の潜水母艦が定限母船として運用される中、迅鯨型は艦隊に随伴する速力を持っています。兵装としても14cmの連装砲を4門備え、一定の防衛能力を持っています。

大正時代末には、長鯨が水上偵察機を搭載し、航空機との連携も可能でした。しかし、迅鯨型の能力は後の大型潜水母艦の登場により次第に不足するようになります。特に伊号潜水艦が軍の主力になると、迅鯨型はその任務から外され、工作艦や練習艦として使用されるようになりました。

戦歴

太平洋戦争が始まると、迅鯨型は「迅鯨」がクェゼリンで、そして「長鯨」がカムラン湾の潜水艦戦支援に従事しました。その後、連合艦隊の旗艦任務を終えた両艦は瀬戸内海で練習艦としての役割を果たすことになります。

1944年には沖縄方面での輸送任務を行ったが、10月10日に「迅鯨」が敵の攻撃により沈没しました。「長鯨」はそれから任務を続け、戦後は復員輸送艦として使用される後に解体されました。

同型艦

• - 迅鯨（じんげい）[II]
• - 長鯨（ちょうげい）

迅鯨型潜水母艦は、日本海軍における潜水艦の発展と艦隊運用の歴史を語る上での重要な存在であり、多くの艦艇が持つ特性への道を開いた艦でもあります。

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