近江舞子南口駅

近江舞子南口駅：琵琶湖畔の夏の思い出と廃線の歴史

滋賀県大津市北比良（旧志賀町）に存在した、江若鉄道の近江舞子南口駅。この駅は、琵琶湖の近江舞子水泳場南浜へのアクセスを目的として、1953年7月1日に開業しました。当初は、観光客の利用が集中する夏季のみ営業する臨時駅でしたが、1962年、近江舞子ロッジが駅近くに開業したことで、年間を通して営業する常設駅へとその役割を変化させました。

近江舞子水泳場は、北浜、中浜、南浜の3つのエリアに分かれており、近江舞子南口駅はその中でも南浜エリアの最寄り駅として、多くの海水浴客に利用されました。駅舎は簡素な作りで、ホームは線路の片側に1面のみ。駅員は配置されておらず、無人駅でした。

しかし、江若鉄道の全線廃止に伴い、1969年11月1日、近江舞子南口駅は歴史の幕を閉じました。廃止から数十年が経ち、現在は駅舎そのものは存在しませんが、その跡地は道路の一部として再利用されています。

周辺環境の変化も、この駅の盛衰を反映しています。かつて駅に隣接していた近江舞子ロッジは、1997年に閉鎖されました。また、江若鉄道の廃線後は、湖西線が近江舞子南口駅付近のカーブを避ける形で建設され、旧線路跡は、自転車道が併設された道路へと生まれ変わりました。しかし、完全に線路跡と道路が重なっているわけではなく、一部区間ではかつての路盤跡を確認できた時期もありました。近年、その線路跡の一部はグランピング施設の建設のために改変され、橋台や橋桁の一部のみが施設の一部として再利用されています。

近江舞子南口駅は、かつて琵琶湖の夏の賑わいを支えた小さな駅でした。その存在は、江若鉄道の歴史、そして地域の変遷を物語る重要な証として、記憶の中に刻まれています。

駅周辺

駅は比良川の近くに位置し、周辺には企業の保養所が多く建ち並んでいました。静かな自然に囲まれた環境の中に、夏の観光客でにぎわう駅が存在していたという、対照的な風景が想像できます。

江若鉄道と近江舞子南口駅

江若鉄道は、大津市から高島市を結ぶローカル私鉄として、地域住民の足として長く親しまれてきました。しかし、モータリゼーションの進展や、他の交通機関との競争激化など、様々な要因が重なり、1969年に全線が廃止されました。近江舞子南口駅も、その廃線とともに歴史の幕を閉じました。

参考文献

近江舞子南口駅の存在を裏付ける資料としては、以下の書籍や資料が挙げられます。

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2
大津市歴史博物館 編『企画展 ありし日の江若鉄道 ―大津・湖西を結ぶ鉄路（みち）―』
大津市歴史博物館 編『江若鉄道の思い出 ありし日の沿線風景』
竹内龍三「私鉄車両めぐり(70) 江若鉄道」『鉄道ピクトリアル』
寺田裕一『新 消えた轍 ―ローカル私鉄廃線跡探訪―』
吉田恭一『地形図で辿る廃線跡 古地図とともにいまはなき鉄道を歩く』
* 「江若鉄道 その車輛・列車・歴史・駅をめぐる」『レイル No.84』

これらの文献には、江若鉄道の歴史、そして近江舞子南口駅を含む各駅の詳細な情報が記されており、当時の様子を知る上で貴重な資料となっています。大津市歴史博物館の画像データベースには、志賀町役場が撮影した近江舞子南口駅の写真も収蔵されているとのことです。

隣の駅

江若鉄道線では、比良駅と近江舞子駅に挟まれていました。これらの駅との間を結ぶ役割を担っていた近江舞子南口駅は、沿線地域の人々の生活に密着した存在であったと言えるでしょう。

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