近田春夫&ハルヲフォンLIVE! 1975 - 77

本作『近田春夫&ハルヲフォンLIVE! 1975 - 77』は、音楽家・近田春夫が率いたバンド、ハルヲフォンの未発表ライブ音源を収録した貴重なアルバムです。2006年（平成18年）6月25日に初めて世に送り出されたこの作品は、1975年から1977年にかけて行われた彼らのライブパフォーマンスの記録を集めたものです。

ライブ音源の初登場

このアルバムがリリースされるまで、近田春夫&ハルヲフォンのライブ音源は公式には発表されていませんでした。そのため、本作は彼らのライブ活動を知る上で極めて重要な資料となっています。スタジオ録音とは異なる、当時の熱気や生演奏ならではのグルーヴが収められており、バンドの真髄に触れることができます。

収録内容の概要

収録されているのは、1975年から1977年の間に演奏された音源です。トラック数は全部で16ですが、中には複数の楽曲がメドレー形式で収められているものがあり、含まれる楽曲を全て数えると合計38曲という膨大なボリュームとなっています。ただし、同じ楽曲でもバージョン違いがある場合は1曲としてカウントされています。

特筆すべき点として、ギタリストの森園勝敏が一部の楽曲にゲスト参加しています。彼の演奏は「レインコート」と、このアルバムで初めて公開されたハルヲフォンのオリジナル未発表曲「愛なんて」で聴くことができます。これは、当時メンバーの小林克己が一時的にバンドを離れていた時期に実現した参加でした。

多様な選曲

本作の大きな魅力の一つは、その収録曲の多様性です。ハルヲフォンのオリジナル楽曲はもちろんのこと、多岐にわたる時代の様々なジャンルの楽曲がカバーされています。クールス、リッチー・ヴァレンス、ゲイリー・グリッターといった洋邦のアーティストから、シャープ・ホークス、スリーファンキーズ、郷ひろみといった日本の歌謡曲やGS（グループ・サウンズ）まで、近田春夫ならではのユニークな選曲センスが光ります。

中でも、「GSメドレー」や「日本のROCKメドレー」は圧巻です。ザ・ジャガーズ、ザ・テンプターズ、ザ・カーナビーツなどのGS黄金期を代表する楽曲や、四人囃子、キャロル、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド、サディスティック・ミカ・バンド、カルメン・マキ&OZといった日本のロックシーンを牽引したバンドの楽曲が次々と演奏されます。これらのメドレーからは、近田春夫の音楽的なルーツや、当時の日本の音楽シーンに対する深い洞察がうかがえます。

また、アルバムに収録されたオリジナル曲には、『COME ON, LET'S GO』（1976年）、『ハルヲフォンレコード』（1977年）といった当時のオリジナルアルバムからの楽曲や、シングル曲、そして前述の未発表曲「愛なんて」が含まれており、ハルヲフォンのオリジナル作品の変遷も同時に追体験できます。

歴史的価値

『近田春夫&ハルヲフォンLIVE! 1975 - 77』は、それまでベールに包まれていたハルヲフォンのライブパフォーマンスを初めて明らかにした作品として、音楽史的に非常に価値が高いと言えます。このアルバムによって、近田春夫とハルヲフォンが当時の日本の音楽シーンにおいて、いかに革新的で多様な活動を展開していたのかを具体的に知ることができるのです。彼らのパワフルな演奏、計算されたサウンド、そして時代やジャンルを超えた大胆な選曲は、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。

本作は、単なるライブ記録にとどまらず、近田春夫というアーティストの飽くなき探求心と、ハルヲフォンというバンドの持つポテンシャルを証明する貴重な証言と言えるでしょう。

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