近藤和彦 (歴史学者)

近藤和彦氏は、1947年8月生まれの日本の歴史学者です。東京大学名誉教授の称号を持ち、日英歴史家会議の委員長も務めています。専門はイギリス近代史で、社会史、文化史、政治史といった幅広い分野を研究対象としています。

近藤氏の学歴は輝かしいものです。1966年に千葉県立千葉高等学校を卒業後、東京大学文学部西洋史学専修課程に進学し、1971年に卒業しました。その後、東京大学大学院人文科学研究科西洋史学専門課程博士課程に進学しますが、1974年に中退しています。しかし、その後も研究への情熱を失うことなく、1980年にはケンブリッジ大学大学院に留学するなど、研鑽を積んでいます。

職歴においても、近藤氏は日本の歴史学界において重要な役割を果たしてきました。1974年に東京大学文学部助手としてキャリアをスタートさせ、名古屋大学文学部専任講師、助教授を経て、1988年には東京大学文学部助教授に就任。1994年には教授に昇進し、同年にロンドン大学客員教授も務めています。1995年には東京大学大学院人文社会系研究科教授に就任。その後も、オックスフォード大学客員上級メンバー、ケンブリッジ大学客員フェローなどを歴任し、国際的な研究交流にも積極的に参加しています。2012年には東京大学を定年退職し名誉教授となり、立正大学文学部教授に就任しましたが、2018年には立正大学も退職しています。

近藤氏の研究成果は、数多くの著書や論文に反映されています。単著としては、『民のモラル：近世イギリスの文化と社会』（山川出版社、1993年）、『文明の表象 英国』（山川出版社、1998年）、『イギリス史10講』（岩波新書、2013年）などがあります。また、『いまは昔：年譜・著作ノート』（山川出版社、2012年）には、氏の詳細な年譜と著作目録が収録されており、研究者としての歩みを辿ることができます。さらに、共著や編著も多く手がけており、多方面からイギリス近代史研究に貢献しています。高校教科書『現代の世界史』『新世界史』『世界の歴史』の編集執筆にも携わっており、日本の歴史教育にも貢献しています。

近藤氏の研究は、イギリス近代社会の多様な側面を深く掘り下げています。特に、18世紀イギリス社会におけるモラルや文化、そして政治構造といったテーマに焦点を当てた研究は高く評価されています。また、近藤氏は、単なる事実の羅列にとどまらず、歴史的視点から現代社会の問題を考察することにも積極的に取り組んでいます。その著作は、一般読者にも分かりやすく書かれており、歴史への理解を深める上で大きな助けとなります。『クリオ』25号（2011年）に掲載された「ロング・インタビュー」では、近藤氏の研究人生や思想が詳細に語られています。

近藤和彦氏は、その豊富な知識と深い洞察力、そして明晰な文章力によって、日本の歴史学界に大きな足跡を残した歴史学者と言えるでしょう。その功績は、単なる研究成果にとどまらず、歴史教育や国際交流といった分野にも及んでいます。これからも、近藤氏のさらなる活躍に期待したいところです。

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