近藤悠三

近藤悠三：染付の美を追求した陶芸家の生涯

近藤悠三（1902年2月8日 - 1985年2月25日）は、20世紀を代表する日本の陶芸家の一人です。染付の分野で卓越した技術と芸術性を発揮し、「染付の悠三」として広く知られています。1977年には、その功績が認められ、重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。

生い立ちと陶芸との出会い

近藤悠三は、京都市清水寺下で生まれ育ちました。祖父は清水寺の寺侍であり、幼い頃から伝統文化に触れる機会に恵まれていました。1914年、京都市立陶磁器試験場付属伝習所轆轤科に入所し、本格的に陶芸の道を歩み始めます。卒業後は同試験場で助手として勤務し、河井寛次郎や濱田庄司といった先駆的な陶芸家たちから影響を受けました。特に濱田庄司からは、窯業科学など、陶芸に関する科学的な知識を学んだことが、彼の後の作風に大きな影響を与えました。

1921年には陶磁器試験場を辞め、富本憲吉の助手となります。富本憲吉は、イギリスからの帰国後に大和に窯を構え、新しい陶芸の可能性を追求していました。近藤悠三は、富本憲吉から素地や釉薬の技法だけでなく、制作に対する心構えについても深く学びました。この時期の経験は、彼の陶芸家としての基礎を築いたと言えるでしょう。

独自の作風の確立

1924年、近藤悠三は京都に戻り、関西美術院洋画研究所でデッサンや洋画を研究します。同時に、清水新道石段下に窯を構え、制作活動を開始しました。初期の頃は、染付の他に、釉裏紅や象嵌などの技法も用いた作品を発表していました。1928年には、第9回帝展で初入選を果たし、以後13回連続で入選するなど、その才能を高く評価されました。

1950年代に入ると、近藤悠三は染付の制作に専念するようになります。つけたてとぼかしを基調とした筆遣いによって濃淡を表現し、ザクロや梅などをモチーフとした絵画的な作品を多く制作しました。1956年には、「山水染付壺」が第3回日本伝統工芸展で日本伝統工芸会賞を受賞し、その名声を確立しました。さらに、1960年以降は、呉須染付に併用して赤絵や金彩の技法を用いるようになり、より華やかで独自の作風を確立しました。この独自の作風は、多くの人々を魅了し、近藤悠三を代表する作風となりました。

教育者としての貢献と晩年

近藤悠三は、陶芸家としてだけでなく、教育者としても多大な貢献をしました。京都市立美術大学（現：京都市立芸術大学）で教鞭を執り、多くの後進を育成しました。1965年10月には、同大学の学長に就任し、教育者としてもその手腕を発揮しました。1970年には紫綬褒章、1973年には勲三等瑞宝章を受章するなど、数々の栄誉に輝きました。

1977年4月25日、近藤悠三は長年の功績が認められ、重要無形文化財「染付」の保持者（人間国宝）に認定されました。晩年まで制作意欲は衰えず、精力的に作品を発表し続けました。1985年2月25日、83歳で逝去。生前には「自分は、し残したことがあるので、生まれ変わっても陶芸家として生まれてくる」と語っていたと伝えられています。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、その芸術は永遠に語り継がれることでしょう。

近藤悠三の家族

陶芸家一族としても知られ、長男の近藤豊、次男の近藤濶も陶芸家として活躍しました。孫には美術家の近藤高弘がいます。俳優の近藤正臣は親戚にあたり、幕末の尊攘運動家の近藤正慎は祖父にあたります。

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