近衛兵 (スウェーデン王室)

スウェーデン王室近衛兵（Högvakten）

スウェーデン王室近衛兵、スウェーデン語で「Högvakten（ホーグヴァクテン）」は、スウェーデン王室と首都ストックホルムの安全を守るという重要な役割を担っています。長い歴史を持つこの部隊は、スウェーデンの伝統と深く結びついた存在です。

歴史

スウェーデンの近衛兵は、ヨーロッパでも有数の古い歴史を誇ります。その起源は16世紀初頭、デンマークからの独立を成し遂げたグスタフ・ヴァーサ（後のグスタフ1世）が、共に蜂起した農民兵の中から自身の護衛として選抜した兵士たちに遡るとされています。以来、彼らは途絶えることなく王室を護り続け、首都ストックホルムの防衛において重要な役割を果たしてきました。戦時には精鋭部隊として戦場に赴き、近代的な警察機構が整備される以前はストックホルム市内の治安維持も担うなど、儀礼的な役割だけでなく実質的な力としても存在しました。

現代の体制と任務

現代の近衛兵は、スウェーデン軍の陸海空軍および郷土防衛隊の各部隊から派遣される兵士で構成されます。多くは全国から集まる徴兵制下の若者たちであり、彼らがこの役割を担う経験は、個人だけでなく国民全体の意識にも良い影響を与えると軍は考えています。

近衛兵として派遣された兵士たちは、王宮内に常駐する近衛連隊による訓練を受け、共に警備任務に就きます。しかし、一人当たりの実質的な近衛兵任務期間は短く、通常は約1週間程度です。年間を通じて延べ約2000人もの兵士が交代でこの任にあたっています。

彼らの主な任務は、スウェーデン王室と、ストックホルム宮殿およびドロットニングホルム宮殿といった王室の居城を警備することです。特にストックホルム宮殿での衛兵交代式は、多くの観光客を惹きつける人気のイベントとなっています。宮殿の公開エリアでも、警備に立つ近衛兵の姿を見ることができます。また、日常の警備に加え、栄誉礼や様々な国家行事にも参加し、王室を支えています。スウェーデン社会を反映し、女性兵士も自然な形で任務に就いており、他国の衛兵部隊と比較した際の一つの特徴となっています。

ただし、国王や王族の身辺警護など、高度な専門性を要する任務は、近衛兵ではなく専門のプロフェッショナル部隊が担当します。

課題

近年、スウェーデン軍は全体の規模が縮小傾向にある一方、国際協力のための海外派遣任務は増加傾向にあります。この人員不足は、近衛兵として人員を派遣する必要がある各部隊に負担をかけています。この課題に対処するため、新たな人員確保策が検討されています。現在報じられている案の一つは、一度徴兵を終えた元兵士を、近衛兵専任のパートタイム兵士として再雇用することです。これにより、正規部隊からの派遣負担を軽減し、必要な人員を確保することを目指しています。

衛兵交代式

ストックホルム宮殿で行われる衛兵交代式は、スウェーデン王室近衛兵の象徴的な儀式です。特に観光シーズンである6月から8月にかけては毎日実施されます。軍楽隊の演奏に合わせて市街を行進してきた近衛兵部隊が王宮に到着し、およそ30分をかけて厳かに交代の儀式を行います。この交代式は、スウェーデンの伝統と規律を示す見どころとして、多くの見物客で賑わいます。

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