近衛基熙

近衛基熈（このえ もとひろ）

近衛基熈は、江戸時代前・中期の公卿であり、近衛家の21代当主にあたる重要な人物です。彼は主に東山天皇と中御門天皇の治世において朝廷の中枢として活動し、江戸幕府との関係構築に尽力しました。五摂家の筆頭として知られており、後陽成天皇の男系三世の子孫でもあります。

生い立ちと経歴

慶安元年（1648年）3月6日、近衛尚嗣の長男として生まれました。母は後水尾天皇の皇女である女二宮です。父の尚嗣が早逝し、跡継ぎが不在だったため、近衛基熈は後水尾上皇の指示により近衛家に迎えられ育てられることになりました。彼は承応3年（1654年）に元服し、以降順調に出世を果たしました。左近衛権少将から始まり、従三位、公卿に昇進し、内大臣、右大臣、さらには左大臣へとポジションを上げていきました。

関白就任までの道のり

基熈は関白就任の直前まで昇進していたものの、延宝8年（1680年）に後水尾法皇が崩御し、霊元天皇が親政を行い始めたことから状況は一変します。霊元天皇は幕府を嫌っていたため、基熈は「親幕派」として疎まれるようになり、その後、関白職は一条兼輝に与えられ、基熈は霊元朝において冷遇されることになりました。貞享3年（1686年）には辛うじて従一位に昇進するも、江戸幕府との緊張関係に加え、朝廷内でも孤立を感じていました。

関白就任とその後

貞享4年（1687年）に霊元天皇が東山天皇に譲位し、その後元禄3年（1690年）にやっと基熈は関白に任命され、朝廷内で権力を持つようになりました。東山天皇の成長に伴って、彼と共に権限を行使するようになり、幕府も基熈と距離を縮めていきました。

しかし、宝永元年（1704年）以降、将軍綱吉との関係が深まり、家宣を後継として迎えることとなり、基熈は江戸に下向する機会を得ます。これは、彼の政治的立場を強化する一環でした。

晩年と文化への寄与

享保7年（1722年）に出家し「悠山」と名乗り、同年9月に75歳で死去しました。葬儀は京都の大徳寺で行われました。基熈は文学にも精通し、和歌や書道、絵画の才能を持っていました。また、日記『基熈公記』では当時の政治状況や事件への考察が見られ、彼の深い知識と理解を示しています。

家族と系譜

彼の正室は後水尾天皇の皇女・品宮で、長女熈子は徳川家宣の正室となりました。基熈の長男家熈も関白を務めるなど、近衛家は幕府とも密接な関係を持ちながら公卿の地位を維持しました。彼の系譜は後水尾天皇を血筋として引き継ぎ、近衛家の発展に寄与しました。近衛基熈の生涯は、江戸時代の政治と文化において重要な役割を果たした歴史的な人物として記憶されています。

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