近鉄モト2711形電車

近鉄モト2711形電車

近鉄モト2711形電車は、近畿日本[[鉄道]]が製造した無蓋電動貨車の一形式です。戦後の輸送需要に対応するため、大阪線で運用されていた電動貨車を改良し、抑速発電ブレーキを搭載した車両として製造されました。その後、改番・改造を経て、2両がモト90形として現存し、養老線車両の回送用として活躍しています。

概要

第二次世界大戦後、大阪線では食糧難に伴う買い出しなどで輸送需要が激増していました。当時運用されていた電動貨車は抑速発電ブレーキを搭載しておらず、大阪線全線での運用が困難でした。そこで、モト2700形およびモワ2800形の設計を踏襲しつつ、抑速発電ブレーキを搭載した電動貨車が製造されることになりました。これがモト2711形およびモワ2811形です。

モト2711形は無蓋電動貨車、モワ2811形は有蓋電動貨車として製造されました。既存の形式の寸法をほぼ踏襲していますが、抑速発電ブレーキを常用するため、抵抗器が高発熱となることから、床下抵抗器付近には防護板が設置されています。

車体

モト2711形

モト2700形のレイアウトを踏襲し、両端に鋼製乗務員室を設け、非貫通構造の妻面を備えています。両端の乗務員室の間は無蓋の平坦な荷台となっており、鋼製のあおり戸が設置されています。車体の両側面床下にはトラス棒が取り付けられ、車体の反りを矯正可能です。電気溶接による接合部が大幅に増え、リベットが激減しているのが特徴です。

モワ2811形

モワ2800形の設計を基本として、両運転台式の車体が製作されています。丸屋根で窓のない側面に片開扉が2カ所ずつ設置され、換気用としてガーランド式通風器が設置されています。モト2711形と同様に、電気溶接の使用箇所が大幅に拡大し、リベット数が激減しているため、すっきりした印象の外観となっています。

主要機器

主電動機

モト2700形やモワ2800形と同一形式の東洋電機製造TDK-542-Aを各台車に2基ずつ搭載しています。駆動方式は吊り掛け式で、歯数比は3.15です。

主制御器

抑速発電ブレーキ付の三菱電機ABF単位スイッチ式制御器を搭載しています。これにより、同系のABF制御器を搭載する直通車各形式との総括制御運転が可能です。

ブレーキ

制御器による抑速発電ブレーキと共に、A動作弁によるAMA自動空気ブレーキ（Aブレーキ）を搭載しています。

台車

モト2711・2713・モワ2811の3両については、参宮急行電鉄デニ2000形からの発生品と見られる住友製鋼所KS-33L鋳鋼組立釣り合い梁式台車を装着しています。モト2712は形鋼組み立て式の釣り合い梁式台車を装着しています。

運用

竣工当初は、モト2711は未電装のまま制御車として運用されましたが、後に電装されました。大阪線で旅客用の直通車と連結運転が可能な電動貨車として、様々な形で重用されました。1950年代中盤になると大阪線の貨物輸送需要が減少し、モト2711・2713は保線工事用として転用されました。

1963年8月20日の形式称号改正で、モト2711形はモト2710形に、モワ2811形はモワ2810形に形式が変更されました。1970年3月2日の電動貨車各形式の2桁形式への改番では、モト2710形はモト90形に、モワ2810形はモワ80形に改番されました。

その後、モワ86とモト95が廃車となり、残ったモト94・96は、養老線用車両の塩浜検修車庫での定期検査時の回送用として使用されることになりました。車体の老朽化が深刻となったため、1990年と1992年にかけて車体が新製されました。1999年には老朽化した電装品が交換され、主電動機、制御器、台車が奈良線8000系からの廃車発生品に交換されました。

モト94・96は富吉検車区に配置され、養老鉄道に移管された後も同線車両の検査回送用として運用されています。

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