近鉄800系電車

近鉄800系電車

近鉄800系電車（きんてつ800けいでんしゃ）は、近畿日本鉄道（近鉄）が運行していた特急・通勤形の電車シリーズで、1955年3月に奈良線向けとして登場しました。この車両は、近鉄初の量産型高性能電車として位置づけられており、全24両が近畿車輛によって製造されました。

1. 800系の概要

800系は、その設計において新しい技術を積極的に取り入れ、従来のダークグリーンからマルーンへの塗色変更が行われました。主な機器は、奈良電気鉄道が開発したデハボ1200形からの流用を基にしつつ、スイスのシュリーレン社との技術提携により、軽量な準張殻構造を持つ車体が設計されました。これは当時の奈良線を含め、近鉄全体の近代化を促進する大きな要因となりました。

新造時はモ800形（偶数車、Mc）とサ700形（T）、モ800形（奇数車、Mc）で構成された3両編成で運用が開始されましたが、後の需給に応じてク710形（Tc）車両が追加され、4両編成へと変わっていきました。その後、1961年には820系電車が800系の後継車として登場しましたが、デザインや構造には違いが見られました。

2. 車体の特徴

800系は、シュリーレン社のフレームレスサッシ技術を使用した窓設計を持ち、軽量化を実現しました。車体は普通鋼を使用し、高張力鋼は用いられませんでしたが、十分な強度と耐久性を持っていました。また、湘南形スタイルの2枚窓を採用し、流線型のデザインが特徴的です。窓下にはステンレスの飾り帯があり、外観を引き立てました。

3. 主要機器

800系の主電動機には三菱電機製のMB-3020-Bを搭載し、600Vの架線で高い起動加速度を実現しています。主制御器は日立製MMC-LTB20を採用し、多段階の制御を可能としています。制動システムも充実しており、空気ブレーキと電子ブレーキが連動した安全な運行を支援していました。

主に奈良線での運用が始まり、新生駒トンネルの開通に伴い、特急列車として高い評価を得ましたが、1964年からは徐々に他の車両へと交代し、急行・準急列車への転用が進みました。1980年代には生駒線での運用や、支線用に特化した改造が行われました。

4. 880系への改造

その後、1986年には880系電車が登場しました。これは事故車を改造し、伊賀線向けに特化した車両です。880系は軽量化された台車や主電動機を再利用し、編成も改装されて運用されました。しかし、880系も高齢化による性能劣化が進み、1993年にはすべての車両が廃車され、800系の系譜はついに消滅しました。

まとめ

近鉄800系電車とその改造後の880系は、近鉄の歴史において重要な役割を果たし、特急・通勤形電車の進化を示す貴重な存在でした。性能や運行効率の向上に寄与し、近鉄全体の近代化を促進したこの車両シリーズは、今日の近鉄の基盤を築いた重要な存在であり続けています。

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