返校

『返校』(Detention)は、台湾のゲーム開発会社Red Candle Gamesが制作したホラーアドベンチャーゲームです。1960年代の戒厳令下の台湾を舞台に、学校を舞台にした恐ろしい出来事を描いています。

ゲームの概要



2017年Steamでリリースされた本作は、その独特な雰囲気とストーリー、そして台湾の歴史を背景にした社会的なテーマが話題を呼び、世界的な人気を集めました。ゲームは主にマウスクリックで操作し、プレイヤーは主人公の学生となり、学校内で起こる異変を探索していきます。

ゲームの舞台は、中国国民党による強権政治が敷かれていた1960年代台湾。白色テロを題材にしており、当時の社会情勢がゲームの重要な要素となっています。開発当初はジョージ・オーウェルの『1984年』のようなディストピア作品を目指していましたが、台湾の戒厳令時代との類似性に気づき、方向転換したそうです。また、台湾ニューシネマの代表作である『牯嶺街少年殺人事件』などからも影響を受けているとされています。

ゲーム中には、台湾の作曲家である鄧雨賢の楽曲が使用されており、特に「望春風」や「雨夜花」といった名曲がゲームの雰囲気を盛り上げています。

ストーリー



物語は、翠華中学の男子学生ウェイが居眠りから目覚めるところから始まります。周囲には誰もいなく、学校には台風警報の文字だけが残されています。講堂で眠っていた女子生徒レイと出会いますが、学校から出る唯一の橋は崩落しており、川は血のように赤く濁っています。学校で一夜を明かすことになった二人は、その後、怪異な出来事に巻き込まれていきます。

ウェイは外部に助けを呼ぼうと校長室へ向かいますが、そこで消息を絶ってしまいます。レイが意識を取り戻すと、ウェイは逆さ吊りにされており、物語はレイが学校の謎を解き明かしていく展開となります。

登場人物



ウェイ(魏仲廷/ウェイ・チャンティン): 翠華中学の2年生で、読書会にも参加している。ゲーム序盤のみ操作するキャラクター。理知的で、バイ教官のことを陰で「グオフォン」と呼んでいる。
レイ(方芮欣/ファン・レイシン): 翠華中学の3年生で、物語の主人公。目が覚めると講堂で眠っており、自分がなぜそこにいるのか覚えていない。白鹿の翡翠のペンダントを大切にしている。物語を進める中で、自身の秘密を思い出していく。実は地縛霊であり、過去の罪の意識から学校を彷徨っている。
イン先生(殷翠涵/イン・ツイハン): レイの担任教師で歴史担当。読書会のメンバーであり、事件後、海外に亡命し、人権活動を続けた。後に病死する。
チャン先生(張明暉/チャン・ミンホイ): カウンセリング担当の教師。レイの相談に乗る中で恋愛関係に発展してしまう。検閲されていない知識や世界をレイに見せるが、結果的に彼女を傷つけ、破滅を招く。ゲーム冒頭で麻袋を被せられている人物。
バイ教官(白國峰/バイ・グオフォン): 学校の軍訓教官で、生徒から恐れられている。元軍人で、多くの人を殺したという噂がある。中華民国総統の馬英九がモデルと指摘されている。

メディアミックス



『返校』は、ゲーム以外にも様々なメディアで展開されています。

書籍:
外伝小説『返校 悪夢再続』(2017年
ドラマ版小説『返校 影集小説』(2021年)
漫画版『返校 -DETENTION-』(2022年)
映画:
『返校 言葉が消えた日』(2019年)
ドラマ:
Netflixオリジナルドラマ『返校』(2020年) - ゲームから30年後の後日談を描く。


ドラマ版のあらすじ



ドラマ版は、1999年の台湾を舞台に、主人公ユンシアンが転校先の翠華高校で起こる事件に巻き込まれる物語です。過去の事件が現代に影響を及ぼしているという設定で、レイ、ウェイ、バイ教官も登場します。

登場人物・キャスト

劉芸香(リウ・ユンシアン): 台北から翠華高級中学に転校してきた少女。李玲葦が演じる。
方芮欣(ファン・レイシン): 翠華高級中学の旧校舎を彷徨う亡霊。韓寧が演じる。
程文亮: ユンシアンの同級生。黄冠智が演じる。
沈華: 翠華高級中学の教師。校長の息子。姚淳耀が演じる。
白國峰: 翠華高級中学の教官。趙正平が演じる。
沈敬: 翠華高級中学の校長。羅光旭が演じる。
鄧馨予: ユンシアンの母親。鄭家楡が演じる。
劉俊賢: ユンシアンの父親。張翰が演じる。
蘇婕妤: 二年忠組の班長。蔡瑞雪が演じる。
魏仲廷: 廃病院に住む世捨て人。吳昆達が演じる。

作品の背景



『返校』は、戒厳令下の台湾における社会の抑圧や恐怖を背景に描かれています。物語には、白色テロや言論統制など、当時の台湾の歴史的な事件が反映されており、ゲームを通じてその歴史を知ることができます。また、登場人物のモデルとされる事件もいくつか存在し、作品のリアリティを高めています。

関連情報



動員戡乱時期臨時条款: 戒厳令下での特別措置。
鄧雨賢: 劇中音楽を提供した作曲家。
傅如芝事件: レイのモデルとなったとされる事件。

『返校』は、ホラーゲームとしてだけでなく、歴史的な背景や社会的なテーマが深く組み込まれた作品として、多くの人々に衝撃と感動を与え続けています。

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