迫

迫・迫りの概念と歴史

迫・迫り（せり）は、舞台機構の一種であり、特定の床部分をくりぬき、昇降装置を取り付けることで、役者や大道具を舞台の上下に動かす仕組みを指します。これにより、意外性のある演出やスムーズな舞台転換が実現します。

古代ローマにおける迫りの起源

この舞台機構の起源は、古代ローマにさかのぼります。特にローマ帝国の第11代皇帝ドミティアヌスがコロッセオに人力リフトを導入したことが挙げられます。彼は競技場の地下に装置を設け、猛獣や剣闘士を舞台上に迫り上げるために使用しました。このリフトは約30基におよび、今でもコロッセオの地下部分にはその痕跡が残されています。

歌舞伎における迫りの発展

日本の舞台芸術、特に歌舞伎においては、1753年に狂言作者である並木正三が初めて舞台に迫りを導入したとされています。彼は、大道具を上下させる「大迫り」と、役者を動かす「小迫り」を人力で操作しました。さらに彼は、1758年には廻り舞台の考案を行い、その後には多くの迫りが廻り舞台に組み込まれるようになりました。これにより、日本の舞台装置はさらに進化し、複雑化していきました。

特に1759年には、花道の下に設置された「すっぽん」と呼ばれる小型の迫りが登場し、主に幽霊や化身などの役者が登場するための装置として使用されました。歌舞伎の特性上、ここから現れる役者は、特に神秘的な存在として認知されています。

近代化と広がり

19世紀に入ると、迫りは国際的にも多くの公演で使用されるようになり、その技術も人力から電動へと進化しました。また、舞台芸術に限らず、コンサートホールのような異なるエンターテインメントの場でも迫りが利用されるようになりました。

例えば、アメリカ・ニューヨークにあるラジオシティ・ミュージックホールでは、4基の迫りが設置されており、その中の1基は「オーケストラ迫り」として知られ、多くのオーケストラや役者を同時に迫り上げる能力を持っています。この迫りは、強力な昇降機能を国際的に評価されています。

まとめ

迫・迫りは、舞台演出の可能性を広げ、多様な表現方法を提供してきた重要な舞台機構です。その起源から現代に至るまでの変遷を通じて、演劇やコンサートなど様々な形での表現を支えてきました。今後も迫りは、多様な演出を可能にし、観客に驚きと感動を与える重要な役割を果たしていくでしょう。

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