追跡 (1973年のテレビドラマ)

市川崑シリーズ・追跡

『市川崑シリーズ・追跡』（いちかわこんシリーズ・ついせき）は、1973年5月22日から同年9月4日までの期間、関西テレビおよびフジテレビ系列で放送されたテレビドラマです。この作品は関西テレビ、C.A.L、活動屋の共同制作によって生まれました。

ストーリーの概要

このドラマの主軸となるのは、中村敦夫が演じる横浜支局の大手新聞社の記者である「私」です。「私」はさまざまな事件の真相を探求する姿を描いており、社会派的なテーマが色濃く表れています。さらに、彼の取材にはベスパというスクーターが用いられており、彼の活動的な職業生活が象徴されています。興味深いのは、「私」という登場人物に名前がないことで、毎回彼の名前についてのやり取りがなされる点です。このユーモラスな設定が視聴者の記憶に残ります。

制作背景と放送開始

実際には、『市川崑シリーズ・追跡』は元々1973年7月3日の放送を予定していました。しかし、前番組『真夜中の警視』の撮影中に主演俳優である原田芳雄が無免許運転で事故を起こしたため、放送は急遽前倒しされることになりました。結果的に、『真夜中の警視』は予定より早く打ち切られ、この新シリーズの放送準備が整いました。

番組の終了と論争

1973年8月28日に放送予定であった第15話「汚れた天使」は、製作元の一つである関西テレビが独自の判断で他のエピソードに差し替えました。この決定は、演出を担当した唐十郎が自らのスタイルで制作した内容が、関西テレビの重役によって「非常識すぎる」とされ、放送を見送る形となったためです。唐はこの決定に激怒し、彼の演出をボイコットする旨を表明しました。

「汚れた天使」の物語は、横須賀で発生した売春婦殺人事件の取材に関与した「私」の同僚記者が、事件に巻き込まれてしまうという衝撃的な内容でした。この作品には、登場人物の複雑な人間関係や過激な描写が含まれており、そのために多くの議論を呼びました。結局、全出演者とスタッフのボイコットにより、シリーズは第16話「天使の罠」で終了を迎えることになりました。

出演者とスタッフ

主要な出演者には、中村敦夫（「私」役）、常田富士男（横山デスク役）、山本紀彦（香月役）、日下武史、ジョエン・ガレッキなどが含まれます。制作チームにも地元の力量が集結し、プロデューサーには加藤哲夫が名を連ねています。音楽は木下忠司が担当し、主題歌の作詞は谷川俊太郎が手掛けました。

まとめ

『市川崑シリーズ・追跡』は、特異なストーリーラインと制作の過程における多くの波乱に満ちたエピソードを持つ作品です。名前のない「私」というキャラクターを通じて、視聴者は社会の現実と向き合う中で、ドラマの中での役割とその真実を問い直すことを促されます。このドラマが持つ意義は、今もなお多くのファンの間で語り継がれることでしょう。

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