通信チェスとは？意味をやさしく解説 - サードペディア百科事典

通信 チェスとは

通信チェスは、離れた場所にいる対局者と通信を用いて行うチェスの形式です。通常のチェス（OTBチェス）とは異なり、1つのゲームが数日から数ヶ月に及ぶことも珍しくありません。この長い時間の中で、じっくりと戦略を練り、チェスの奥深さを味わえるのが特徴です。

OTBチェスと通信 チェスの違い

- OTBチェス (Over-the-Board chess)：対局者同士が実際に盤を挟み、リアルタイムで指し手を交互に打ち合う、一般的なチェス。
- 通信チェス (Correspondence chess)：郵便、Eメール、専用サーバーなどの通信手段を用いて、遠隔地の対局者と行うチェス。

通信チェスは、その歴史も長く、電報、FAX、伝書鳩など、様々な通信手段が用いられてきました。現在では、インターネットの普及により、EメールやWebサーバーを利用した対局が主流となっています。対局の勝敗は管理組織に報告され、レーティングや次の対局に反映されます。

通信 チェスの組織

- ICCF (国際通信チェス連盟)：通信チェスの世界最大の組織。
- JCCA (日本通信チェス協会)：ICCF公認の日本の管理組織。以前はJPCA（日本郵便チェス協会）と呼ばれていました。

日本では、インターネット普及以前は「郵便チェス」として親しまれていましたが、現在は「通信チェス」と呼ばれることが一般的です。

通信 チェスの詳細

持ち時間

通信チェスにも持ち時間が定められています。例えば、日本の郵便戦では「10手ごとに30日の考慮時間」が与えられます。対局時計の代わりに、郵便局の消印などが消費日数の証拠として用いられます。

トーナメント戦

通常、トーナメント戦は3人以上のグループで総当たり戦（ラウンドロビン）で行われます。対戦形式には、1人の相手と1ゲームを行うシングルラウンドロビンと、1人の相手と白黒同時に対局するダブルラウンドロビンがあります。例えば、4人グループの場合、ダブルラウンドロビンでは各プレイヤーが3人x2=6局を同時進行でプレイします。

休暇制度

通信チェスでは、対局中に休暇を申請することも可能です。通常は年間30日の休暇が取得でき、病気などの場合はさらに特別休暇が30日取得できます。

対局方法の特徴

- 非同時進行：対局は同時刻に行われず、双方が異なる時間帯に指し手を送ります。
- 日数単位の持ち時間：持ち時間が時間単位ではなく、日数単位で規定されています。
- 書籍やソフトの利用：対局中に書籍、データベース、ソフトの利用が認められています。

通信 チェスの長所と短所

長所

- 場所を選ばない：自宅などから遠隔地のプレイヤーと対戦できます。
- 柔軟性：忙しい人や病気の人でも、自分のペースで対局できます。
- 情報交換：ゲーム期間が長いため、指し手以外の情報交換も可能です。

短所

- 管理能力と根気：対局を継続するための管理能力と根気が必要です。
- 英語力：ICCFの国際戦では、英語でのやり取りが必要です。
- ルール：郵便戦やメール戦では、指し手を間違えると持ち時間が削られる場合があります。

評価

「アマチュアが序盤戦などを研究する場合に理想的な方法である。」 - フランソワ・ル・リヨネ

「郵便チェスでは定跡本等を見ながら指せます。序盤の定跡を覚えるよい勉強になります。」 - 有田謙二

通信チェスの歴史は古く、中世には商人間で対局が行われていました。18世紀には、フランスのルイ6世とイギリスのヘンリー1世、商人同士の対局も記録されています。

1824年には都市間で通信チェスが開催され、1834年にはパリ対ロンドンのマッチが行われました。1844年にはワシントンとボルチモアの間で電報チェスが行われ、1889年には世界チャンピオン同士の電報マッチも開催されました。

1928年には最初の国際組織IFSBが設立され、1935年には最初の通信チェスオリンピックが開催されました。1945年にはICCFが設立され、1950年には初の通信チェス世界選手権が開催されました。

近年の出来事

- 1965年：JPCA（JCCAの前身）がICCFに加盟。
- 1966年：日本初の通信チェス選手権が開催。
- 1970年：宇宙船ソユーズ9号と地上技術者との間で対局（引き分け）。
- 1997年：ICCF初のEメール招待トーナメント開催。
- 2004年：ICCFでWebサーバー戦開始。
- 2008年：ICCFが全てのEメールトーナメントを廃止。

通信チェス