通奏低音

通奏低音とは

通奏低音（つうそうていおん）は、バロック音楽において特徴的な伴奏の形態です。イタリア語の「バッソ・コンティヌオ（Basso continuo）」を訳した言葉で、絶え間なく音が続くことを意味します。一般的には「コンティヌオ」と略されることもあります。ドイツ語では「ゲネラルバス（Generalbass）」と呼ばれます。

通奏低音の仕組み

楽譜には低音部の旋律のみが記されており、演奏者はその旋律に合わせて適切な和音を即興的に演奏します。この和音を生成する過程を「リアライズ」と呼びます。演奏されるべき和音を指示するために、音符に数字や変化記号を添える「数字付き低音」という記譜法が用いられます。現代では、専門家以外のために、リアライズされた楽譜が市販されることも多くなりました。

使用される楽器

通奏低音の演奏には、オルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器、リュートやハープ、ギターなどの撥弦楽器といった和音を奏でられる楽器が用いられます。また、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ、ファゴットなどの低音旋律楽器が併用されることもあります。楽譜に楽器の指定がない場合が多く、演奏時にこれらの楽器を任意に選択することが一般的です。ただし、歴史的には必ずしも和音楽器と低音旋律楽器が同時に用いられていたわけではありません。17世紀初頭のソナタでは、オブリガートのバス・パートが含まれる場合にこれらの楽器が使用されたと考えられています。現代の演奏では、楽器編成の都合や古楽の様式によらない演奏の場合、旋律楽器のみで和音を伴わない演奏がされることもありますが、これは本来の通奏低音の形態としては不完全であると言えます。

バロック音楽における重要性

通奏低音はバロック音楽の根幹をなす要素であり、バロック時代を「通奏低音の時代」と呼ぶこともあります。この演奏法は、ポピュラー音楽における「コードネーム」の概念にも通じる原理があります。

比喩的な用法

日本では、通奏低音という言葉が音楽以外の分野で「常に底流としてある考えや主張のたとえ」として比喩的に用いられることがあります。しかし、これは低音を持続させるドローンや執拗低音（オスティナート・バス）と混同された誤用であると考えられます。

まとめ

通奏低音は、バロック音楽において重要な役割を果たした伴奏形態であり、即興的な演奏と和声の理解が求められます。現代の音楽にもその影響が見られ、音楽史を理解する上で欠かせない要素です。

関連項目

オクターブの規則
数字付き低音

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