通恵河

通恵河：北京を繋ぐ水路の歴史と変遷

通恵河（つうけいが）は、中国の首都である北京市を流れる全長約20kmの河川であり、壮大な京杭大運河の一部を構成しています。その流れは、東城区の東便門から始まり、朝陽区を経て、最終的に通州区で北運河と合流します。

元代の建設と命名

通恵河の歴史は、大元ウルスの時代に遡ります。 郭守敬の指揮のもと、1292年に建設が開始され、翌年の秋に完成しました。この水路は、当時の皇帝クビライによって「通恵河」と命名されました。通恵河の建設は、北京への物資輸送を円滑にし、都市の発展に大きく貢献しました。

明代以降の変遷

明代に入ると、通恵河は「御河（玉河）」と改称されました。1528年には、呉仲らの提議により、通恵河の改修と、江南地方で行われていた「剥運」と呼ばれる輸送方法の改革が実施されました。これにより、通州と北京間の食糧輸送が飛躍的に改善されました。1696年、康熙帝は、国家が独占してきた通恵河での物資輸送に民間船の導入を許可し、物流の自由化を推し進めました。

近代の暗渠化と水質問題、そして改善へ

しかし、近代化の波は通恵河にも影響を与えました。1956年、都市部を流れる区間は全て暗渠化され、その結果、20世紀後半には水質が著しく悪化し、墨汁のような状態になりました。近年、汚水処理施設の整備が進められたことで、通恵河の水質は徐々に改善されつつあります。


通恵河は、北京の都市開発と密接に関わってきました。 元代の建設以来、物資輸送を支え、都市の発展に貢献してきた一方で、近代化の過程で水質汚染という課題に直面しました。現在では、水質改善の取り組みが進められており、北京の貴重な水資源として、その役割が見直されています。


参考文献：
『元史』巻64志16河渠1
新宮学「通州・北京間の物流と在地社会」山本英史 編『伝統中国の地域像』（慶應義塾大学出版会、2000年）/新宮『明清都市商業史の研究』（汲古書院、2017年）

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