通過帯域

通過帯域（パスバンド）とは

通過帯域（つうかたいいき）、またはパスバンド（英: Passband）とは、フィルタ回路が特定の周波数範囲の信号を減衰させずに通過させる周波数または波長の範囲を指します。この概念は、電気通信、光学、音響学など、様々な分野で重要な役割を果たしています。

フィルタにおける通過帯域

フィルタは、特定の周波数成分を選択的に通過または減衰させる回路です。通過帯域は、フィルタが最も効率的に信号を伝送する周波数範囲であり、この範囲内の信号は最小限の損失で通過します。一方、通過帯域外の周波数成分は減衰され、信号は弱められます。

電気通信分野では、フィルタは特定の周波数帯域の信号を選択的に取り出すために使用されます。例えば、ラジオ受信機では、特定の放送局の周波数帯域に対応する通過帯域を持つフィルタを使用することで、目的の局の信号だけを受信できます。光学分野では、特定の波長の光だけを通過させるフィルタが用いられ、例えば、カメラのレンズや光学機器に使用されています。

デジタル伝送におけるパスバンド

デジタル通信では、周波数帯域はベースバンドとパスバンドに分けられます。ベースバンドとは、周波数0付近の信号帯域のことで、例えば音声信号などが該当します。一方、パスバンドは特定の制限周波数より高い周波数帯域であり、無線通信ではベースバンド信号を直接送信することが難しいため、パスバンドに変調して送信します。

例えば、人間の声（300Hzから3kHz）を無線で送信する場合、このベースバンド信号をより高い周波数帯域のパスバンドに変調する必要があります。受信側では、復調処理によってパスバンド信号を元のベースバンド信号に戻します。

通過帯域の応用例

ラジオ受信機は、チューニング可能なバンドパスフィルタを備えており、その通過帯域は特定の放送局からの信号帯域幅を十分に受信できる幅に設定されています。これにより、目的の放送局の信号だけを選択的に受信できます。

また、多くの楽器も通過帯域の概念を利用しています。例えば、笛やティン・ホイッスルなどの木管楽器は、特定の周波数帯域の音を共鳴させることで音を発生させます。笛の吹き込み口から発生する広帯域の音は、本体の穴を指で押さえることで、特定の通過帯域のみが共鳴します。指使いを変えることで、複数の異なる通過帯域が選択でき、異なる音高の音を出すことができます。

通過帯域幅と応答時間

一般的に、フィルタの通過帯域幅とフィルタが新たな入力に応答するのにかかる時間は反比例の関係にあります。通過帯域幅が広いフィルタは、入力信号の変化に対して素早く反応できます。これは、数学におけるフーリエ変換の原理によって説明できます。つまり、時間領域における変化の速さは、周波数領域における帯域幅の広さに対応しているということです。

まとめ

通過帯域は、フィルタが信号を減衰させずに通過させる周波数範囲であり、様々な分野で重要な役割を果たしています。電気通信や光学、音響学、さらには楽器など、多岐にわたる応用例があります。フィルタの特性を理解することで、より効率的で正確な信号処理が可能になります。

関連項目

* 阻止帯域

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