速度表示灯

速度表示灯：大型トラックの個性的な安全装置とその歴史

かつて日本の道路を走っていた大型トラックには、独特の安全装置がありました。それが「速度表示灯」です。1967年、道路運送車両法の保安基準により、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックに、屋根上に速度を示すランプを取り付けることが義務付けられました。このランプは、トラックの速度に応じて点灯するランプの数を変えることで、速度を周囲に知らせる役割を担っていました。

速度表示灯の仕組みと基準

速度表示灯は、トラックの速度に応じて点灯するランプの数が変化する仕組みでした。具体的には、40km/h以下で1つ、40km/h超60km/h以下で2つ、60km/hを超えると3つのランプが点灯するよう設計されていました。ランプの色は黄緑色で、前方100mからでも確認できる明るさが求められていました。

法律では、点灯開始速度は技術的に可能な限り低い速度とし、20km/hを超えてはならないと規定されていました。しかし、実際には20km/hを超えてから点灯する車両も多く見られました。また、球切れのまま放置されている車両も多く、点灯している車両を目にする機会は少なかったようです。

速度表示灯が廃止された理由

速度表示灯は、導入当初は車両の速度を視覚的に分かりやすく示す効果が期待されました。しかし、いくつかの問題点が指摘されるようになりました。

まず、日本の法律特有の規定だったため、海外メーカーのトラックを輸入する際には、新たに速度表示灯を取り付けなければならず、コストと手間がかかりました。デザイン変更が必要になるケースもあり、輸入業者にとって大きな負担となっていました。

さらに、一般ドライバーの認知度が低く、その意味を理解していない人も多かったことが問題視されました。速度表示灯の存在意義を理解していない人が多い状況では、安全装置としての効果も限定的でした。

これらの問題点を踏まえ、1999年の法改正により、速度表示灯は廃止されました。代わりに、大型トラックへのスピードリミッターの装着が義務付けられることになりました。スピードリミッターは、車両の速度を一定以上に制限することで、安全性を向上させる効果があります。

国産トラックへの速度表示灯の装着は、2002年頃からマイナーチェンジに合わせて順次廃止され、2004年には全ての車種で新車への装着がなくなりました。

韓国における速度表示灯

韓国でも、1978年から1997年にかけて、日本の制度を参考に速度表示灯の装着が義務付けられていました。最大積載量4トン以上の貨物自動車と高速バスが対象で、ランプの色は赤色でした。しかし、日本と同様の問題点から、1997年に廃止され、スピードリミッターの装着が義務化されました。

まとめ

速度表示灯は、日本の大型トラックの歴史において独特の安全装置として存在していました。しかし、輸入車への影響や一般認知度の低さなどの問題から、スピードリミッターへの移行という形で、その役目を終えました。速度表示灯は、時代と共に変化する安全基準の中で、一つの転換期を示す象徴的な存在と言えるでしょう。現在では、レトロな大型トラックの姿を思い起こさせる、懐かしい存在となっています。

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