造園作品

造園作品とは

造園作品とは、造園の専門家、すなわち造園家やランドスケープアーキテクトによって創造される、空間的な芸術作品や環境デザインの成果物を総称する言葉です。これは、単に植物を植えたり石を配置したりするだけでなく、土地の持つポテンシャルを引き出し、人々の活動を豊かにするような空間全体をデザインし、実現したものを指します。

評価と選集

造園分野における優れた創作物を評価し、その成果を広く周知する取り組みは、様々な機関によって行われています。特に、日本の造園学術分野を牽引する日本造園学会では、隔年で優れた作品を顕彰する日本造園学会賞の作品部門を選定しており、同時にその成果をまとめた『造園作品選集』を刊行しています。この選集は、その時点での日本の造園の最先端を示すものとして重要な役割を果たしています。

造園作品選集は、主に「設計部門」と「計画部門」に分かれて構成されており、設計部門では、以下のような多岐にわたる種類の造園作品が対象とされています。

自然風景地および庭園: 自然の景観を活かした設計や、伝統的な様式、あるいは現代的なデザインによる庭園
都市公園: 大小様々なスケールの都市における公共の緑地空間
教育施設、医療福祉施設、文化施設等のランドスケープ: 学校、病院、美術館などの敷地における外部空間
集合住宅、宿泊施設等のランドスケープ: マンション、ホテルなどのアメニティや景観を考慮した共用空間
商業施設、業務施設等のランドスケープ: ショッピングモールやオフィスビルなどの敷地、公開空地
展示（博覧会等のランドスケープ作品）: 博覧会やフェスティバルなどで一時的に創出される空間
エイジング: 既存の造園空間を改修・再生するプロジェクト
海外・エイジング: 海外で行われたプロジェクトや、海外での改修・再生プロジェクト

ここで言われる「ランドスケープ」という言葉は、多くの文脈で、特定の施設（建築物など）の敷地やその周辺においてデザインされた屋外空間、すなわち外構やエクステリアの空間デザイン全般を指しています。

作品集の刊行

日本造園学会の選集とは別に、造園作品を紹介する専門書籍も数多く出版されています。マルモ出版や建築資料研究社など、造園や建築関連の書籍を専門的に扱う出版社からは、国内外の著名な造園家や設計事務所による作品を集めた作品集が多数刊行されており、これらは造園の実例やデザインの傾向を知る上で貴重な情報源となっています。

概念的な区分

造園作品という言葉が指し示す範囲や、その本質については、様々な角度からの議論が存在します。例えば、造園研究者であり実践者でもある進士五十八氏は、自身の著書『東京の緑』の中で、「造園作品」と「造園空間」という二つの概念を区別して考えるべきだと提唱しています。進士氏によれば、「造園作品」は、額縁に収められた立体的な絵画のように、主として観賞される対象としての側面が強く、例えば鑑賞者が多数入り込むと、その本来の美しさや意図された静けさが損なわれる可能性があるタイプを指します。これに対し、「造園空間」は、利用者がその中に入り込み、そこで活動し、生活を営むことを前提とした空間であり、むしろ多くの人が集まることで活気が生まれ、好ましい賑わいや雰囲気が醸成されるタイプを指します。

この二つの概念的な違いは、具体的な事例において、私的な庭園（私園）と公共の公園の差、日本の伝統的な庭園と西洋の庭園の違い、あるいは観賞を主とする室町時代の庭園と、散策を楽しむ江戸時代の回遊式庭園との対比などに対応すると、進士氏は説明しています。この議論は、造園が単なるモノとしての作品であるだけでなく、人間が利用し、体験する「空間」としての側面も持つことを理解する上で重要な視点を提供しています。

関連事項

造園作品は、その創作性や芸術性から、著作物としての側面を持つ場合があり、また、造園芸術というより広い分野の一部として捉えることもできます。

（脚注および参考文献は、この辞書記事の作成に用いられた情報源を示しますが、一般の読者が直接参照することを必須とするものではありません。）

参考文献例:

竹田直樹, 八木健太郎『彫刻シンポジウムにおけるランドスケープデザインを試みた共同制作について』「環境芸術 : 環境芸術学会論文集(3)」, 2003年10月
相田諭希典『第38回東京都公園協会賞受賞論文 長岡安平の造園作品に関する調査』「都市公園」 (162), 2003年9月号
立山富士彦『「より良い造園作品つくり」を目指して(<特集>公共造園における設計監理のあり方)』「ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture」 60(1), 1996年8月号
鈴木誠『造園作品選集刊行委員会(<特集>学会活動の70年をふりかえって 企画の活動)』「ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture」 58(4), 1995年3月号
* 鈴木昌道『庭園の構成原理の研究に基づく一連の造園作品(学会賞受賞者業績要旨)』「造園雑誌」 45(1), 1981年8月号

もう一度検索