造網性

造網性（ぞうもうせい）

造網性とは、動物の一部が網を作り、それを利用して餌を捕らえる習性を指します。特に、この特性はクモやトビケラに見られますが、すべての種が網を張るわけではありません。クモ類の約半数と一部のトビケラのみがこの行動を持ち、結果的に彼らは造網型の捕食者として分類されます。

クモ類の造網性

肉食性のクモは、主に昆虫などの小動物を捕えて食べるために、糸を組み合わせて網を作ります。この網に引っかかった獲物を捕獲する造網性のクモが該当します。彼らは様々な型の網を作成し、その形状は種によって異なります。網作りを行わないクモの中には、獲物に直接アプローチして捕まえる徘徊性のものも存在します。

クモの足には、捕らえた獲物を持ち上げるための小さな爪が存在します。造網性を持つクモの中には、「三爪類」という分類があり、これらは足の先端に加え、下側にも小さな爪を持っています。全ての三爪類が造網性を持つわけではなく、祖先からの進化過程で徘徊性へ変化した種もあります。特にキシダグモ科では、幼虫が網を張り、成虫が徘徊性になることが観察されています。

トビケラの造網性

トビケラの幼虫は水生の昆虫で、しばしばミノムシのように自分の体を隠した巣を作り移動します。中には、巣の外側や一部に網を張り、その網で微細な粒子を捕らえることによって餌を得るトビケラもいます。このような網を作るトビケラを「造網性トビケラ」と呼ぶことがあります。

トビケラの網はしばしば巣と一体化しており、ヒゲナガカワトビケラ科の種はれきの間に糸を引き回し、網と巣を作ります。一部の進化した種は、固定巣の一部に規則的な編み目の捕獲網を作成することが確認されています。このような捕獲網は、特にオオシマトビケラで細い編み目を形成し、さらに水流を調整する入水管を備えています。

造網性の類似例

網を作る習性はクモやトビケラだけではなく、他の生物にも見られます。例えば、巻貝のオオヘビガイやユムシも、海底で粘液を放出し、それによって微細な粒子を捕獲することが知られていますが、これらははっきりとした網の構造を作成しません。

造網性の利害

造網性の生物は人間にとって必ずしも好ましい存在ではありません。クモの網は住居や家具に貼り付くことで嫌われることが多く、通路を遮ることもあります。また、トビケラの網は水流を妨げる原因となり、水力発電所ではその影響が特に顕著です。トビケラの生息域にある人工的な水路では、定期的な掃除が欠かせないため、「電力を食う虫」との別名がつけられています。

基盤との関係

網を張るためには、基盤が一定の状態で維持される必要があります。つまり、網が存在していることは、基盤が安定していることを示しています。水生昆虫の場合、この状態を利用して、採集された水生昆虫の中から造網型のトビケラが占める割合を計算し、川底の安定度を測る方法が取られています。クモに関しては、網が張られている場所が他の生物に利用されていないことの証明と見なされることもあります。歴史的なエピソードでは、源頼朝が櫻木のほこらに隠れた際、クモの網を見て、隠れた場所が安全であることを確認したことが知られています。

参考文献

• - 八木沼健夫『原色日本蜘蛛類大図鑑（増補改訂）』(1968) 保育社
• - 川合禎次編『日本産水生昆虫検索図鑑』(1985) 東海大学出版会
• - 上野益三『淡水生物学』(1960) 北隆館
• - 八木沼健夫『よみもの動物記　クモの話』(1968) 北隆館
• - 森下郁子『川の健康診断』(1977) 日本放送出版協会（NHKブックス）
• - 水野信彦、御所久右ヱ門『河川の生態学　生態学研究シリーズ2』(1972) 築地書房

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