逢びき

逢びき（Brief Encounter）について

『逢びき』は、1945年に公開されたイギリスの恋愛映画で、ノエル・カワードの戯曲『静物画』を基にしています。監督を務めたのはデヴィッド・リーンで、主演にはセリア・ジョンソンとトレヴァー・ハワードが起用されています。この映画は男女の禁じられた恋と別れを描いており、そのストーリーは多くの人々の心に深く残るものです。

映画の背景には、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が使用されており、その旋律は作品全体にわたって印象的な雰囲気を醸し出しています。特に、アイリーン・ジョイスによるピアノ独奏が話題になりました。さらに、1974年にはリチャード・バートンとソフィア・ローレンが主演するテレビ映画版がリメイクされ、日本では1976年に劇場公開されました。

ストーリーの概要

物語の舞台は1938年、イギリスのとある駅です。中年の女性ローラは、配偶者を持ちながらも医師アレックとの道ならぬ感情に揺れ動きます。2人は運命的な出会いを果たしますが、その初めの瞬間から彼らを取り巻く周囲の人々が、彼らの関係に影を落とします。駅の待合室で最後の別れを告げるところに、おしゃべりな友人ドリーが現れ、二人の大切な時を台無しにしてしまいます。

ローラは、夫フレッドと子どもたちの待つ家庭に帰ることになり、日常の生活そのものが彼女の心を重くします。彼女は自らの枠から外れることに対する葛藤と、アレックとの関係が進展する中での嬉しさと切なさに翻弄されます。毎週木曜日、ミルフォードへ出かけるローラとアレックの間には特別な感情が芽生えていきますが、必然的にこの二人の関係は立ち行かないものとなります。

登場人物の連携

二人がデートを重ねる中で、訪れる瞬間はどれも印象深く、日常からの一時的な解放感が感じられます。それでも、帰宅するたびにローラは家庭の温もりと同時に罪悪感に捉えられ、自らの心情に深い苦悩を抱きます。ある日、二人は植物園で散歩しながら愛の告白を交わしますが、ローラは家族に対する思いから、自らの感情と向き合わざるを得なくなります。

物語が進行するにつれて、彼女は心中での感情の押し引きに悩まされ、アレックもまた、家族を持つ身としての責任に悩みながら彼女との別れを決意します。最後の別れの場面では、別れを告げることができず、情緒不安定になったローラは、自らを投げ出したい衝動に駆られるほど深い感情の波に飲み込まれます。

作品の評価と影響

『逢びき』は、公開当初から高い評価を受けており、Rotten Tomatoesでは91％の評価を得ています。小津安二郎も本作を称賛しつつ、その独特の形式に対して意見を述べています。また、本作は以降の映画制作にも大きな影響を与え、1984年の『恋におちて』や2003年の『ロスト・イン・トランスレーション』などにそのエッセンスを見出すことができます。

シンプルな物語でありながらも感情の深みを持つ『逢びき』は、映画愛好者にとって長く語り継がれる名作となっています。

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