連邦和平会議 - 21世紀パンロン
「21世紀パンロン連邦和平会議」（ビルマ語: ပြည်ထောင်စု ငြိမ်းချမ်းရေးညီလာခံ (၂၁) ရာစု ပင်လုံ、英語: Union Peace Conference - 21st Century Panglong）は、ミャンマー連邦共和国において、2016年から2020年にかけて国民民主連盟（NLD）政権と様々な少数民族武装勢力との間で開催された、和平実現のための重要な対話の場です。ビルマ独立運動指導者アウンサンが1947年に少数民族代表と合意した歴史的なパンロン協定になぞらえ、「21世紀」の名を冠して首都ネピドーで計4回にわたり開催されました。
ミャンマーでは、1947年のパンロン協定が約束した少数民族の自治権が、独立後の憲法や1962年の国軍によるクーデターを経て事実上無効化されたことを背景に、長年にわたり国軍と少数民族武装勢力との間で内戦が続いてきました。1988年の民主化運動後も軍事政権が続きましたが、2010年の総選挙を経て発足したテインセイン政権は、国内和平に積極的に取り組み、2015年には政府と8つの武装勢力間で全国停戦合意（NCA）が署名されました。
NCAには署名後の政治対話プロセスが盛り込まれており、これはNCAプロセスと呼ばれます。和平対話は連邦和平会議、連邦レベル政治対話、国民レベル政治対話の三層構造で行われ、国民レベルの合意は連邦和平対話共同委員会（UPDJC）を経て、最終的に連邦和平会議で承認されることで「連邦合意」となる仕組みです。テインセイン大統領は退任直前の2016年1月に第1回連邦和平会議を開催し、政府、軍、議会、武装勢力、政党など関係者が集まり、政治、社会経済、安全保障など5つの議題について協議が行われました。
2015年の総選挙で大勝したNLDは、アウンサンスーチー国家顧問を中心に2016年4月に政権を発足させました。NLD政権は少数民族武装勢力との和平を主要公約の一つとし、前政権の和平ロードマップを引き継ぐ形で「21世紀パンロン会議」の開催を提唱しました。スーチー氏は父アウンサンが主導した「パンロン」の名を用いることで、民族融和と和平交渉の進展を図ろうとしました。しかし、この過程で前政権の和平交渉機関ミャンマー・ピース・センター（MPC）は解体され、国家和解平和センター（NPRC）に改組。これにより、長年の交渉で培われた専門知識を持つ多くの職員が離職するなど、和平プロセスを円滑に進める上での課題も生じました。
開催に向け、NPRCはNCA未署名組織の参加交渉も進めました。特にワ州連合軍（UWSA）など有力な非署名組織との対話が模索され、様々な関係者が協議を重ねました。
2016年8月31日から9月3日にかけて、ネピドーで開催されました。NCA署名組織を含む17の少数民族武装勢力代表など約850人が参加。各組織から連邦国家に関する議案が提出されましたが、実質的な議論には至らず、関係者の顔合わせとしての意味合いが強い会議となりました。一部参加組織（UWSP代表団）は待遇への不満から会議を欠席する事態も発生しました。
当初予定より遅れ、2017年5月24日から29日にかけて開催されました。この間にUWSAを主導とする連邦政治交渉協議委員会（FPNCC）が結成され、会議にはNCA署名8組織に加え、FPNCC傘下の7組織も参加しました。UPDJCで合意された政治や経済などの41項目が議論され、うち37項目で合意に至りましたが、連邦からの離脱権否定など一部の重要議題は棚上げされました。NCA非署名組織はオブザーバー参加にとどまり、実質的な協議への参加や政府関係者との面会も制限されるなど、立場の違いが浮き彫りとなりました。
非停戦組織との交渉努力の結果、2018年2月には2組織が新たにNCAに署名しました。第3回会議は2018年7月11日から16日まで開催され、NCA署名10組織とFPNCC7組織が参加。UPDJC合意に基づき14項目が議論され、これらについては合意が得られました。しかし、安全保障や連邦制の具体的なあり方といった核心的な問題は未解決のまま残されました。国軍最高司令官の発言が一部参加組織の反発を招き、その後、主要な署名組織であるKNUとRCSSが和平プロセスへの参加を中断するなど、和平交渉の停滞が顕著になりました。
和平交渉の難航を受け、スーチー政権は経済政策に重点を移す傾向が見られました。一時中断していたKNUやRCSSとの対話が再開され、第4回会議開催の糸口が見出されましたが、COVID-19の影響で延期されました。2020年8月19日から21日にかけて、NCA署名10組織のみを対象に開催。総選挙を控える中で、NCAの実施枠組みやプロセス継続、連邦制の原則など15項目が議論されましたが、2021年2月の国軍によるクーデター発生により、これまでの和平プロセスおよび「21世紀パンロン」会議で積み上げられた努力は全て白紙に戻される結果となりました。
経緯
ミャンマーでは、1947年のパンロン協定が約束した少数民族の自治権が、独立後の憲法や1962年の国軍によるクーデターを経て事実上無効化されたことを背景に、長年にわたり国軍と少数民族武装勢力との間で内戦が続いてきました。1988年の民主化運動後も軍事政権が続きましたが、2010年の総選挙を経て発足したテインセイン政権は、国内和平に積極的に取り組み、2015年には政府と8つの武装勢力間で全国停戦合意（NCA）が署名されました。
NCAには署名後の政治対話プロセスが盛り込まれており、これはNCAプロセスと呼ばれます。和平対話は連邦和平会議、連邦レベル政治対話、国民レベル政治対話の三層構造で行われ、国民レベルの合意は連邦和平対話共同委員会（UPDJC）を経て、最終的に連邦和平会議で承認されることで「連邦合意」となる仕組みです。テインセイン大統領は退任直前の2016年1月に第1回連邦和平会議を開催し、政府、軍、議会、武装勢力、政党など関係者が集まり、政治、社会経済、安全保障など5つの議題について協議が行われました。
2015年の総選挙で大勝したNLDは、アウンサンスーチー国家顧問を中心に2016年4月に政権を発足させました。NLD政権は少数民族武装勢力との和平を主要公約の一つとし、前政権の和平ロードマップを引き継ぐ形で「21世紀パンロン会議」の開催を提唱しました。スーチー氏は父アウンサンが主導した「パンロン」の名を用いることで、民族融和と和平交渉の進展を図ろうとしました。しかし、この過程で前政権の和平交渉機関ミャンマー・ピース・センター（MPC）は解体され、国家和解平和センター（NPRC）に改組。これにより、長年の交渉で培われた専門知識を持つ多くの職員が離職するなど、和平プロセスを円滑に進める上での課題も生じました。
開催に向け、NPRCはNCA未署名組織の参加交渉も進めました。特にワ州連合軍（UWSA）など有力な非署名組織との対話が模索され、様々な関係者が協議を重ねました。
開催
第1回会議
2016年8月31日から9月3日にかけて、ネピドーで開催されました。NCA署名組織を含む17の少数民族武装勢力代表など約850人が参加。各組織から連邦国家に関する議案が提出されましたが、実質的な議論には至らず、関係者の顔合わせとしての意味合いが強い会議となりました。一部参加組織（UWSP代表団）は待遇への不満から会議を欠席する事態も発生しました。
第2回会議
当初予定より遅れ、2017年5月24日から29日にかけて開催されました。この間にUWSAを主導とする連邦政治交渉協議委員会（FPNCC）が結成され、会議にはNCA署名8組織に加え、FPNCC傘下の7組織も参加しました。UPDJCで合意された政治や経済などの41項目が議論され、うち37項目で合意に至りましたが、連邦からの離脱権否定など一部の重要議題は棚上げされました。NCA非署名組織はオブザーバー参加にとどまり、実質的な協議への参加や政府関係者との面会も制限されるなど、立場の違いが浮き彫りとなりました。
第3回会議
非停戦組織との交渉努力の結果、2018年2月には2組織が新たにNCAに署名しました。第3回会議は2018年7月11日から16日まで開催され、NCA署名10組織とFPNCC7組織が参加。UPDJC合意に基づき14項目が議論され、これらについては合意が得られました。しかし、安全保障や連邦制の具体的なあり方といった核心的な問題は未解決のまま残されました。国軍最高司令官の発言が一部参加組織の反発を招き、その後、主要な署名組織であるKNUとRCSSが和平プロセスへの参加を中断するなど、和平交渉の停滞が顕著になりました。
第4回会議
和平交渉の難航を受け、スーチー政権は経済政策に重点を移す傾向が見られました。一時中断していたKNUやRCSSとの対話が再開され、第4回会議開催の糸口が見出されましたが、COVID-19の影響で延期されました。2020年8月19日から21日にかけて、NCA署名10組織のみを対象に開催。総選挙を控える中で、NCAの実施枠組みやプロセス継続、連邦制の原則など15項目が議論されましたが、2021年2月の国軍によるクーデター発生により、これまでの和平プロセスおよび「21世紀パンロン」会議で積み上げられた努力は全て白紙に戻される結果となりました。
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