連隊長レドル

連隊長レドル (Oberst Redl):

サボー・イシュトヴァーン監督による1985年製作のドイツ・オーストリア・ハンガリー合作映画『連隊長レドル』は、激動の時代を生きたオーストリア＝ハンガリー帝国の軍人、アルフレート・レードルの生涯を題材としています。

あらすじ

物語は、ガリツィア出身の貧しい農民の息子、アルフレート・レードルが陸軍士官学校への入学を果たすところから始まります。彼は皇帝フランツ・ヨーゼフへの忠誠を誓い、その恩義を決して忘れません。士官学校では、ハンガリー貴族のクリストフ・クビニと出会い、友情を育みます。クビニの姉カタリンとの出会いも、レードルの人生に大きな影響を与えます。

レードルとクビニは順調に出世していく一方で、政治的な理想の違いから徐々に道を違えていきます。クビニがハンガリーの独立を願うのに対し、レードルは皇帝への忠誠を貫きます。また、レードルはクビニに対し、友情を超えた感情を抱くようになります。ウィーンでの任務中、レードルはカタリンと恋人関係になりますが、彼女はレードルが本当に愛しているのは弟だと感じています。

その後、レードルはロシア国境の駐屯地に配属されますが、規律を正そうとする彼の姿勢は、出自を軽蔑する下士官たちの反発を招きます。フォン・ローデン大佐の取り計らいでウィーンに戻ったレードルは、防衛局の副局長として、軍内部のスパイ摘発という任務に就きます。同性愛者であるという噂を打ち消すため、彼はカタリンに紹介された女性クラリッサと結婚します。

レードルはフランツ・フェルディナント大公の陰謀に巻き込まれ、帝国や皇族の裏の顔を知り幻滅します。大公はレードルを陥れるため、イタリア人将校ヴェロッキオに彼を誘惑させます。自暴自棄になったレードルは機密情報を漏洩し、通謀の罪で逮捕されます。クビニはレードルに自殺を勧め、レードルは苦悩の末に自ら命を絶ちます。

映画は、サラエボ事件と第一次世界大戦の勃発を暗示して幕を閉じます。

史実との相違点

映画では、レードルがルーシ人であるとされていますが、実際にはドイツ系チェコ人です。また、レードルの出自やクビニ姉弟、大公の陰謀などはフィクションです。史実のレードルも同性愛者でしたが、それが直接的な自殺の原因ではありません。彼はロシアのスパイであり、その裏切りが発覚したことが自殺の背景にありました。

映画の冒頭には「史実に基づいてレードル大佐の物語を語っているのではなく、登場人物の行動はすべて架空のものである」という但し書きが表示されます。

キャスト

クラウス・マリア・ブランダウアー
グドルン・ランドグレーベ
ヤン・ニクラス

受賞・ノミネート

カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ
* アカデミー外国語映画賞 ノミネート

『連隊長レドル』は、一人の男の悲劇を通して、帝国の矛盾と没落を描いた作品として、高く評価されています。

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