進藤流

進藤流について

進藤流（しんどう-りゅう）は、日本の能楽界における廃絶した流儀の一つであり、特に江戸時代中期以降に重要な役割を果たしました。この流儀は、観世流の座付として活動し、「ワキ方筆頭」としての伝統と格式を持っていました。

進藤流の創立と発展

進藤流は、初代の進藤久右衛門忠次（1552年～1635年）の手によって興されました。忠次は、手猿楽のワキとして活動していた堀池宗活から学び、その教えを基に新たな流派を形成しました。1603年には、観世黒雪によって観世座のワキに迎え入れられることとなり、これが進藤流にとっての重要な転機となりました。

特に寛永年間に、観世座本ワキの福王流が中絶した際、進藤流はその地位を引き継ぎました。観世流の中で四座の筆頭とされる位置づけにあったため、進藤流は江戸時代を通じてその筆頭の地位を保ち続けました。この状態は、後に黒雪が甥の服部宗巴に福王流を再興させたにもかかわらず、進藤家が上席のままで幕末を迎えたことからも確認できます。

進藤流の役割と影響

進藤流は、能楽における素謡の分野においても特に強い影響力を持っていました。特に初期においては、その存在感は顕著であり、忠次の子である進藤以三は宗家を継がずに京都で素謡の教授に従事することで生計を立てました。このことからも、進藤流の教えが伝承され続けたことがうかがえます。以三の著作である『筆次抄』も、その重要な記録の一つとして位置づけられています。

流儀の衰退と消滅

しかし、明治の維新後、進藤流は急速に衰退していきました。十世の宗家である進藤信啓が家業がを再興できず、家族を含む多くの役者がこの流派を捨ててしまったため、明治初年には流儀が完全に消滅することとなりました。

近年の研究と伝承

近年の研究によって、松江地方においても進藤流の素謡が伝承されていることが確認されています。特に、森田流笛方である槻宅聡の調査が重要な役割を果たしました。また、進藤流の謡本も明治三十年代には出雲地方で刊行されていたとされ、宗家が廃絶した後も地方においてはその伝承が一定の勢力を保持していたことが伺えます。

進藤流は現在では廃絶してしまったものの、その歴史や伝承は日本の能楽文化において重要な一部を構成しており、今後も研究や復興の手掛かりとして参照されることでしょう。

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