遅延評価

遅延評価（Lazy Evaluation）とは

遅延評価とは、プログラミングにおける評価戦略の一種で、値が必要になるまで実際の計算を遅らせるという特徴を持ちます。これは、特に非正格な関数型言語において重要な概念であり、効率的なプログラムの実行を可能にします。

対義語としては、値を即座に評価する先行評価（Eager Evaluation）があります。

概要

遅延評価では、評価が必要な値が存在する場合でも、その計算をすぐには行いません。代わりに、計算の実体をプロミス（promise）またはサンク（thunk）と呼ばれる中間状態として保持します。そして、値が実際に必要になった時に初めて計算を実行し、その結果をキャッシュすることが一般的です。

この仕組みにより、一度計算された値は再利用され、不要な計算を省くことができます。ただし、Haskellの実装においては、キャッシュ機能の有無や挙動が異なる場合があります。

遅延評価の利点

計算量の最適化: 関数が引数の全てを使うとは限りません。遅延評価では、実際に必要となる値のみを計算するため、不要な計算を避けて計算量を減らすことができます。
値の再利用: 同じ評価を複数回利用する場合、先行評価では毎回計算が必要ですが、遅延評価では最初の計算結果をキャッシュとして利用するため、効率的な再利用が可能です。

遅延評価の課題

実装の複雑さ: 遅延評価を実装するには、計算のタイミングを適切に制御する必要があるため、実装が複雑になる傾向があります。
計算タイミングの予測困難さ: 実際に計算が行われるタイミングを正確に予測することが難しく、デバッグやプログラムの理解を困難にする場合があります。
アーキテクチャとの相性: 現行の計算機アーキテクチャは先行評価と相性が良いため、遅延評価の普及には時間がかかると考えられています。

遅延評価を採用している言語

遅延評価を原則としている言語の例

Concurrent Clean
Haskell
Lazy K

遅延評価を仕様に定義している言語の例

D言語
ML
Scala
Scheme
Mathematica

関連概念

評価戦略: 先行評価、短絡評価、部分評価など、プログラムにおける式の評価方法に関する様々な戦略。
先読み: データや命令を事前に読み込んでおくことで、処理の高速化を図る技術。
デザインパターン: プログラミングにおける再利用可能な解決策の型。
* Future: 非同期処理の結果を表すオブジェクト。遅延評価と組み合わせることで、処理の実行を遅らせ、必要になった時点で結果を取得できます。

遅延評価は、効率的なプログラミングのための強力なツールですが、その特性を理解し、適切に利用することが重要です。

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