Mathematica

Mathematica（マセマティカ）とは

Mathematicaは、スティーブン・ウルフラムによって考案され、ウルフラム・リサーチ社が開発・販売している数式処理システムです。数学者とプログラマーのチームによって開発され、項書き換えを基本とした強力なプログラミング[[言語]]としても利用されています。複数のパラダイムをサポートし、様々な分野での計算やデータ分析に役立ちます。

歴史

1986年、スティーブン・ウルフラムとそのチームは新しい数式処理システムの開発を開始しました。当初、このシステムはOmegaやPolyMathと呼ばれていましたが、スティーブ・ジョブズに「ダサい名前だ」と指摘され、「Mathematica」と名付けられました。ロゴには「スパイキー」と呼ばれる多面体が使われ、バージョンごとに異なる装飾が施されています。

プログラミング[[言語]]としての特徴

Mathematicaは、関数型と手続き型の両方をサポートするマルチパラダイム・プログラミング[[言語]]です。その起源は、ウルフラムらが1979年頃に開発したSymbolic Manipulation Programにあり、ALGOL、LISP、APL、Macsymaなどの影響を受けています。C/C++およびJavaで実装されていますが、拡張可能なライブラリはすべてWolfram言語で書かれています。4,000以上の組み込み関数があり、これらを組み合わせることで簡単にプログラムを作成できます。

システム構成

Mathematicaは、Wolfram言語を解釈し計算を実行する「カーネル」と、計算結果を表示する「フロントエンド」の2つの部分で構成されています。カーネルとフロントエンドの通信には「MathLink」プロトコルが使用されます。最新バージョンは14.1（2024年7月31日リリース）で、様々なコンピュータシステムで利用可能です。

主な機能

Mathematicaには、以下のような多岐にわたる機能が搭載されています。

コアとなる言語:
手続き型と関数型をサポートするマルチパラダイム・プログラミング[[言語]]
文字列操作、正規表現、意味解析を含むテキストマイニングツール
並列プログラミング用ツール
数学とアルゴリズム:
初等関数、特殊関数、数論、群論ライブラリ
複素数、任意精度、区間演算、記号計算のサポート
連続的/離散的計算のための数値および記号ツール
疎[[行列]]を含む行列とデータの操作ツール
常微分方程式 (ODE)、偏微分方程式 (PDE)、微分代数方程式 (DAE)などのソルバー
連続積分変換および離散積分変換
直線/曲線あてはめ、仮説検定、確率分布の計算
制約付き/なし、局所/大域最適化
組み合わせ問題用ツール
制御系ライブラリ
金融計算ツール
可視化とグラフィックス:
2D/3Dデータや関数の可視化とアニメーション化ツール
グラフの視覚化と解析ツール
データの操作:
データ、画像、動画、音声、CAD、GIS、文書などの各種フォーマットのインポート/エクスポート
画像認識を含む画像処理と形態学的画像処理ツール
音声/画像データのウェーブレット解析ライブラリ
データ・クラスタリング、シーケンスアラインメントなどのデータマイニングツール
計算可能なデータ:
数学、科学、地理、経済、言語データベースへのアクセス
気象、金融の履歴およびリアルタイムデータの取得
WolframAlphaのデータへのアクセスと計算
動的インタラクティブ機能:
式やグラフィックスのインタラクティブな操作
計算とアプリケーションのためのユーザーインターフェースを追加するツール
ノートブックとドキュメント:
ノートブックによるインタラクティブなドキュメント作成
Wolfram言語と自然言語ユーザーインタフェースによる入力
数式エディタと自動報告書生成を含む科学技術用ワードプロセッシング
PDF、La[[TeX]]、HTML、XMLへの書き出し、プレゼンテーション用スライドショー作成
システムインタフェースと配備:
C、Java、.NET、R、SQL、HTML、XMLなど各言語との接続・連携
CUDA、OpenCLによるGPUコンピューティングと並列計算

フロントエンドとカーネル

Mathematicaのシステムは、ユーザーとの対話を行う「フロントエンド」と演算を実行する「カーネル」の2つの部分で構成されます。フロントエンドはGUIを担当し、自動構文カラーリング、入力補完、デバッガなどの開発ツールを備えています。フロントエンドとカーネルは独立して起動し、「MathLink」プロトコルを使って通信します。

ノートブック

Mathematicaの標準的なフロントエンドである「ノートブック」は、データ、数式、テキスト、コード、演算結果、グラフィックスなどを混在させることができる対話型ドキュメントです。データの処理から可視化、文書作成までをシームレスに行うことが可能です。ユーザーの入力やカーネルの演算結果は「セル」に格納され、文書のアウトライン化やセクション分割が容易に行えます。ノートブックはWolfram言語で記述されており、それ自体をWolfram言語で生成・修正・解析できます。

代替フロントエンド

Mathematicaには標準のノートブック以外にも、EclipseベースのIDEであるWolfram Workbenchや、テキスト型インタフェースなどの代替フロントエンドが存在します。これにより、プロジェクトベースのコード開発やコマンドラインからの利用も可能です。

計算可能なデータ

Mathematicaには、数学、科学、地理、経済、言語学など様々な分野のデータが組み込まれており、即座に計算に使用できます。これらのデータはモデル評価などに利用でき、ウルフラム・リサーチのデータサーバにアクセスして最新データに更新できます。株価や気象などのデータはリアルタイムに配信されます。

高性能計算

Mathematicaは、高精度演算を可能にするGNU Multi-Precision Libraryを採用し、マルチコアコンピュータでの自動マルチスレッド化やGPUコンピューティングをサポートしています。これにより、複雑な計算を高速に実行できます。

他のアプリケーションとの接続

MathLinkプロトコルは、Mathematicaと他のアプリケーションとの連携を可能にします。C、Java、.NET、R、SQLなどの言語やデータベースとの接続機能が提供されており、既存のコードや機能を活用できます。また、LabVIEWや金融データ、HIDデバイスなどとの接続も可能です。

アプリケーション配布

Mathematicaで作成したアプリケーションは、Wolfram CDF Player、Wolfram Player Pro、webMathematicaなどのツールを使って配布できます。これらのツールにより、アプリケーションの実行やウェブ上での利用が可能になります。また、コードをC[[言語]]に変換したり、DLLを生成したりすることもできます。

対応プラットフォームとライセンス

Mathematicaは、Windows、macOS、Linuxなど様々なプラットフォームに対応しており、64ビット版がサポートされています。ライセンスはプロプライエタリですが、教育機関や学生向けには低価格で提供されています。また、Raspberry Piなどの一部のデバイスには無料でバンドルされています。

リリース履歴

Mathematicaは継続的にバージョンアップされており、新機能の追加や改善が行われています。

サンプルコード

例として、方程式の根を数値的に求める場合、以下のコードを使用します。

mathematica
In[1]:= FindRoot[Exp[x] == x^2 + 2, {x, -1}]
Out[1]= {x -> 1.3190736768573652}


また、行列式を求める場合は以下のようになります。

mathematica
In[2]:= Det[Array[Times, {6, 6}, 0] /. 0 -> 1]
Out[2]= 0

マルチパラダイムと一つの言語

Mathematicaは、一つの問題に対して複数のアプローチが可能です。例えば、最大公約数のテーブルを作る場合、関数型、APL的、Table関数、手続き型など様々な方法で実現できます。

すべては「式」である

Mathematicaでは、すべてのオブジェクトがhead[e1, e2, ...]という基本構造を持ち、入れ子にできます。この構造により、数式やリストを同様に扱うことができ、柔軟なプログラミングが可能です。

関連文献

Mathematicaに関する書籍は多数出版されています。日本語と英語の書籍が多数存在し、様々なレベルのユーザーに対応しています。

関連項目

関連のある項目として、スティーブン・ウルフラム、ウルフラム・リサーチ、Wolfram Alpha、New Kind of Scienceなどがあります。

外部リンク

Mathematicaに関する詳細な情報やダウンロード、ドキュメントは以下のリンクからアクセスできます。

Wolfram Mathematica
Wolfram Mathematica ドキュメントセンター
HULINKS

これらの情報により、Mathematicaの理解を深め、様々な分野での活用を促進できます。

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