運び屋 (映画)

映画『運び屋』解説

『運び屋』（原題: The Mule）は、2018年に公開されたアメリカの犯罪映画です。監督と主演は、巨匠クリント・イーストウッドが務めました。

概要

本作は、サム・ドルニックによる『ニューヨーク・タイムズ』の記事「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule」を原案としています。脚本はニック・シェンクが執筆し、80代でシナロア・カルテルの麻薬の運び屋となった第二次世界大戦の退役軍人、レオ・シャープの実話に基づいています。

イーストウッド自身の監督作品への出演は2008年の『グラン・トリノ』以来となり、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシアといった豪華キャストが共演しています。

アメリカでは2018年12月14日に公開され、全世界で1億ドルを超える興行収入を記録しました。

あらすじ

物語は2017年、かつては名の知れた園芸家だったアール・ストーンが、仕事の失敗と家族との関係悪化に苦しむところから始まります。

そんな彼に「車を走らせるだけで稼げる仕事」が舞い込みます。アールはそれが麻薬の運び屋とは知らずに引き受けてしまいます。高額な報酬に目がくらんだアールは、家を取り戻したり、友人を救ったりするために何度も仕事を引き受けるうちに、運んでいるものが麻薬だと気づきます。

一方、麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官は、手柄を挙げるために麻薬カルテルの男を脅し、捜査に協力させ始めます。アールが5回目の仕事を終えると、カルテルのボスであるラトンは彼に大口の仕事を任せるよう指示し、運ぶ麻薬の量は増えていきます。監視役として幹部のフリオが付きますが、アールは普段と変わらず気ままに仕事をこなし、ラトンもそれを認めていました。

9回目の仕事も難なく終えたアールはラトンに屋敷に招かれます。しかしその頃、コリン捜査官は上層部からのプレッシャーを受け、麻薬カルテルの隠れ家を急襲します。隠れ家を潰されたカルテルの幹部グスタボはラトンを殺害し、新たなボスの座につくと、アールに厳格なスケジュール管理を指示します。

アールは渋々従い12回目の仕事を始めますが、モーテルに宿泊した際、コリン捜査官が張り込んでいることに気づきます。翌朝、孫のジニーから電話があり、妻のメアリーが重病で余命わずかだと知らされます。アールは葛藤の末、メアリーの元へ駆けつけ、彼女の最期を看取り、家族との関係を修復します。

麻薬を持って姿を消したアールをグスタボの部下は探し出し、捕えますが、事情を聞いて痛めつけるだけで解放し、仕事に復帰させます。しかし、道路の先にはコリン捜査官たちの部隊が待ち構えていました。

逮捕されたアールは、弁護士の有利な証言を拒否し、有罪判決を受け入れ刑務所に収監されます。刑務所の花壇にはアールが育てた美しい花が咲いていました。

登場人物

アール・ストーン: クリント・イーストウッド演じる主人公。かつては有名な園芸家でしたが、今は仕事も家族関係も上手くいっていません。
コリン・ベイツ捜査官: ブラッドリー・クーパー演じる麻薬取締局の捜査官。アールを追います。
メアリー: ダイアン・ウィースト演じるアールの妻。アールを愛していますが、長年のすれ違いに苦しんでいます。
ラトン: アンディ・ガルシア演じる麻薬カルテルのボス。アールを重用します。

製作

本作は、インペラティブ・エンターテイメントが記事の権利を買い取り映画化しました。当初はルーベン・フライシャーが監督する予定でしたが、最終的にクリント・イーストウッドが監督を務めることになりました。

撮影は、ニュー・メキシコ州やジョージア州などで行われました。エンドクレジットでは、イーストウッドの親友であるピエール・リシアンとリチャード・シッケルに捧げられています。

評価

Rotten Tomatoesでは70%、Metacriticでは58/100という評価を得ています。

まとめ

『運び屋』は、クリント・イーストウッドが監督・主演を務めた作品で、人生の晩年に予期せぬ道を進むことになった老人の姿を描いています。麻薬カルテルという危険な世界に足を踏み入れながらも、家族との関係を取り戻そうとする主人公の姿を通して、人生における後悔や贖罪、そして家族の絆の大切さを考えさせられる作品です。

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