過臭素酸

過臭素酸：強力な酸化力を秘めた不安定な酸

過臭素酸(HBrO4)は、臭素のオキソ酸であり、臭素の酸化状態が最高酸化状態の+7である化合物です。名称に「過」と付きますが、分子内に-O-O-結合はなく、過酸ではありません。過塩素酸と類似した性質を示し、非常に強い酸化力を持ちます。しかしながら、その不安定性から、純粋な遊離酸は未だ単離されていません。

過臭素酸：発見の歴史と合成法

かつては、過臭素酸および過臭素酸イオンの存在は否定されており、その理由を説明する論文が発表されるほどでした。しかし、1968年になって、放射性同位体セレン-83を含むセレン酸イオンのβ崩壊によって、初めて過臭素酸イオンが合成されました。

この発見以降、過臭素酸の合成法はいくつか開発されました。代表的な方法として、臭素酸塩を二フッ化キセノンで酸化する方法や、濃厚臭素酸ナトリウム水溶液を塩基性条件下で冷却しながらフッ素で酸化する方法が挙げられます。後者の方法はより実用的で、実験室レベルでの合成に用いられています。

これらの合成法では、まず[臭素]]酸イオン(BrO3-)を酸化して過臭素酸イオン(BrO4-)を生成します。その後、未反応の臭素酸イオンを臭素酸銀(AgBrO3)として、フッ化物イオンをフッ化カルシウム]として沈殿除去し、陽[[イオン交換樹脂を用いて過臭素酸を分離精製します。

過臭素酸：化学的性質

過臭素酸イオンは熱力学的には不安定ですが、反応速度論的には比較的安定です。強い酸化剤であり、その酸化還元電位は標準状態において1.76Vです。この高い酸化力は、様々な反応に応用できる可能性を秘めています。

過臭素酸水溶液は、減圧濃縮によって6 mol/dm³(約55%)程度までの濃縮が可能です。100℃以下では比較的安定していますが、それ以上の濃縮や加熱を行うと不安定になり、塩化物イオンを酸化したり、有機物と接触すると爆発的に燃焼することがあります。また、水溶液中では過塩素酸と同様に非常に強い酸性を示します。

過臭素酸イオンと過臭素酸塩

過臭素酸の電離によって生成する過臭素酸イオン(BrO4-)は、過塩素酸イオンと同様に正四面体型構造を持ち、Br-O結合距離は161 pmです。このイオンを含むイオン結晶を過臭素酸塩と呼びます。

いくつかの過臭素酸塩が知られており、過臭素酸カリウム(KBrO4)は比較的安定で275℃で分解し、過臭素酸アンモニウム(NH4BrO4)は175℃まで安定です。これらの塩は、過臭素酸の性質を理解する上で重要な役割を果たしています。その他、過臭素酸カルシウム(Ca(BrO4)2)、過臭素酸ナトリウム(NaBrO4)なども知られています。

まとめ

過臭素酸は、その強力な酸化力と不安定性という相反する性質を持つ興味深い化合物です。その合成法や性質、および過臭素酸塩に関する研究は、化学の基礎研究において重要な位置を占めています。今後の研究によって、過臭素酸のさらなる特性や応用が明らかになることが期待されます。

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