道の駅おとふけ

北海道河東郡音更町に位置する道の駅です。主要地方道である国道241号（帯広北バイパス）沿いに設けられ、地域活性化や交流の拠点として重要な役割を担っています。その歴史は二つの段階に分けられ、2022年春に大規模な移転とリニューアルを経て、新たな姿へと生まれ変わりました。本記事では、便宜上、1996年4月から2022年3月まで稼働していた施設を「旧施設」、そして2022年4月以降に供用開始された施設を「新施設」と呼び分けて解説します。

旧施設から新施設へ：変遷の歩み

道の駅おとふけの歩みは、まず旧施設の誕生から始まります。旧施設は1991年に音更町農業協同組合（JAおとふけ）が所有する土地を町が借り上げ、「音更町特産センター」として建設されました。特徴的な三角屋根を持つ鉄骨造り2階建ての建物で、1996年4月に道の駅として正式に登録されました。運営は音更町物産協会が担当し、地域の特産品販売や飲食店などを備えていました。駐車場は普通車39台、大型車2台などを収容し、24時間利用可能なトイレも設置されていました。2015年には「重点道の駅候補」にも選ばれるなど、地域にとってなくてはならない存在でした。しかし、施設の老朽化や手狭になったことから、新たな場所での道の駅整備が検討されるようになります。旧施設は2022年3月末で営業を終了し、その役割を終えました。建物は2023年度中に解体される計画です。

新施設への移転計画は、2010年頃から具体的に動き始めました。旧施設の課題を解消し、さらに地域の魅力を広く発信する拠点としての機能を強化することを目指し、単なる道の駅の移転にとどまらず、周辺の公園整備と一体となった広範な整備計画が立てられました。検討の結果、2018年には旧施設から西へ約2km離れた、道東自動車道の音更帯広インターチェンジ南側、有名な菓子店である柳月スイートピアガーデンの東隣という現在の場所への移転が決定しました。

新施設の建設に向けて、2019年5月には施設の運営を担う事業者として「ヴェスタおとふけグループ」が選定され、同年7月には音更町との間で基本協定が締結されました。地域住民への説明会などを経て、2020年6月には新施設の建設工事が開始されました。建築工事と外構工事は2021年12月に完了。工事期間中には、音更町が舞台の一つとなったNHK連続テレビ小説『なつぞら』に登場するロケセットを再現するため、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングが2回に分けて実施され、多くの支援を集めました。そして2021年9月には、新しい道の駅の愛称が公募により「なつぞらのふる里」に決定し、専用のロゴマークも制定されました。

施設の開業に先立ち、2021年12月の音更町議会では、道の駅おとふけに関する条例の改正や、旧施設の根拠となっていた音更町特産センター条例の廃止が認められました。また、新しい道の駅の指定管理者として、開業から10年間にわたり「オカモト・鈴蘭ビルサービスグループ」が担当することも決定しました。さらに、新施設とその周辺の住所表記を、愛称にちなんで「なつぞら」に変更する議案も可決されました。この住所変更は2022年4月1日に実施され、地域に新たな名前が誕生しました。

そしていよいよ、新施設は2022年4月7日に音更町民などを対象としたプレオープンを経て、4月15日にグランドオープンを迎えました。

新施設「なつぞらのふる里」の魅力

新施設「なつぞらのふる里」は、木造一部鉄骨造りの平屋建ての建物です。広々とした空間には、音更町や十勝地域の食の魅力を堪能できる様々な店舗が集まっています。地元の新鮮な農畜産物を活用した飲食店として、洋食のPetit Joie、帯広名物の豚丼を提供する豚丼のぶたはげ、人気のらぁめん藤、そばや然、うどん麦笑壱咲、そして根強いファンの多いカレーショップインデアンが出店し、多様な味覚に応えています。また、音更町をはじめとする十勝管内の豊かな恵みを販売する「なつぞら市場」では、新鮮な野菜や果物、加工品などを豊富に取り扱っています。休憩や軽食を楽しめる茶屋 GREEN、地元の人気ベーカリーである満寿屋商店みちます、手軽なテイクアウトを提供するSKYPIEAなども利用者から好評を得ています。

施設内の休憩コーナーには「道の駅ピアノ」が設置されており、訪れた人が誰でも自由に演奏を楽しむことができます。音更町の歴史や、町出身の世界的作曲家である伊福部昭氏を紹介するパネル展示、さらに町民の寄贈によるというゴジラの巨大フィギュアなども展示されており、単なる休憩施設にとどまらない文化的な要素も兼ね備えています。

新施設の最大の特徴の一つは、連続テレビ小説『なつぞら』の世界観を再現したエリアです。ドラマの美術を担当したNHKアートの監修のもと、ヒロイン・なつの実家である柴田牧場の母屋、牛舎、サイロ、そして菓子屋「雪月」の建物が再現されています。牛舎や雪月の建物内部では、ドラマで使用された小道具や名場面を紹介する展示が行われており、ドラマファンにとって見逃せないスポットとなっています。特に雪月では、冬期を除いて柳月製の限定商品を購入することも可能です。

道の駅の敷地北側には、道路を挟んで広大な「なつぞら公園」が隣接しており、道の駅と一体的に利用できる構造となっています。芝生広場や屋外ステージ、築山、フラワーガーデンなど、様々な施設が整備されており、休憩だけでなく散策やレクリエーションも楽しめます。また、道の駅エリアには「OTOFUKE」の文字モニュメントも設置され、記念撮影スポットとして人気です。2023年以降にはドッグランの整備も予定されており、ますます多様なニーズに対応できる施設へと進化が期待されています。

駐車場は一般車244台、大型車22台など、旧施設と比較して大幅に収容台数が増強され、休日などの混雑時にも利用しやすくなりました。24時間利用可能なトイレやベビーコーナーも完備されています。

アクセスと周辺施設

道の駅おとふけの登録路線は国道241号（帯広北バイパス）です。移転に合わせて、駐車場内に都市間バスの停留所が新設され、交通結節点としての機能も担っています。2022年4月現在、新千歳空港、札幌、旭川、釧路空港などを結ぶ複数の都市間バス路線が道の駅に乗り入れており、公共交通機関でのアクセスも便利になりました。また、周辺には道東自動車道の音更帯広ICがあり、高速道路からのアクセスも容易です。隣接するなつぞら公園や柳月スイートピアガーデンと合わせて訪れることができます。音更町内には、道の駅ガーデンスパ十勝川温泉というもう一つの道の駅もあり、合わせて巡るのもおすすめです。

道の駅おとふけ「なつぞらのふる里」は、地域の食や文化、景観といった多様な魅力を発信する拠点として、多くの人々に親しまれています。

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