達摩省一

達摩 省一（だるま せいいち）は、1936年10月に生まれ、2016年3月13日に死去した、日本の高校野球界で多岐にわたる活躍を見せた人物である。野球解説者、審判員、そして指導者として知られ、特に母校である関西大学硬式野球部の監督として輝かしい実績を残した。

石川県金沢市で生を受けた後、大阪府で育ち、中学で野球を始めた。大阪府立寝屋川高等学校では右腕投手として甲子園を目指したが、在学中にその夢は叶わなかった。その後、関西大学に進学し硬式野球部に入部。同期には村山実氏や上田利治氏といった後の名選手・指導者が名を連ねている。大学在学中の1956年には、全日本大学野球選手権大会でチームの一員として優勝を経験した。

大学卒業後は、大阪産業大学高等学校の教員となり、同校の野球部監督も務めた。教育の道に進む一方で、1962年に関西大学の事務職員に転身。この頃から高校野球の審判員としても活動を開始し、1965年からは甲子園大会のグラウンドにも立つようになった。

1967年、達摩氏は関西大学硬式野球部の監督に就任した。以後6年間にわたりチームを率い、関西六大学野球リーグにおいて12シーズン中8度の優勝を達成するなど、チームを大学野球界の強豪へと押し上げた。特に、1968年のオフシーズンには、高校野球の審判としてその存在を知っていた神戸市立神港高等学校の速球投手、山口高志氏の関西大学進学に尽力したことは語り草となっている。当時、市神港高校野球部監督を務めていた関西大学OBの高木太三朗氏と話し合い、山口氏を母校へと導いたのである。山口氏がエース投手として活躍し、長沢和雄氏、山口円氏ら強力な選手を擁した1972年には、春季・秋季のリーグ戦を連覇。さらに、大学野球の頂点を決める全日本大学野球選手権大会と、秋の明治神宮野球大会をも制し、大学野球史上初めてとなる年間「4冠」という歴史的な快挙を成し遂げた。この時期、達摩氏は同期である村山実氏の所有するマンションに居住しており、そこで山口高志氏と村山氏を引き合わせる機会もあったという。

監督退任後、1973年には再び高校野球の審判員として甲子園の土を踏んだ。多くの記憶に残る試合を裁いたが、特に1979年8月16日に行われた夏の甲子園大会3回戦、箕島高校（和歌山）対星稜高校（石川）の延長18回に及ぶ伝説的な試合では、三塁塁審を務めた。1982年に審判員としての活動から身を引いた。

審判員を勇退した後も、達摩氏は日本の高校野球界の発展に貢献し続けた。日本高校野球連盟の評議員や、技術・振興委員長などの要職を歴任。また、テレビやラジオで高校野球の解説者としても活躍し、長年の経験で培った深い洞察力と豊富な知識に基づいた解説は、多くの野球ファンに親しまれた。

2016年3月13日、達摩省一氏は大阪市内の病院にて、肝不全のため79歳でその生涯を閉じた。本人の強い遺志により、訃報はすぐには公表されず、死去から1ヶ月以上が経過した同年4月18日に、日本高校野球連盟と関西大学硬式野球部から正式に発表された。

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