遠山寛賢

遠山 寛賢（とおやま かんけん）

遠山寛賢は1888年9月24日、沖縄県首里市に生まれた著名な空手家です。彼は全日本空手道連盟の前身である旧全日本空手道連盟において、修道舘館長や大師範を務め、昭和の時代において重要な存在となりました。特に糸洲安恒の直系の弟子として、彼の空手道を広めることに尽力しました。

経歴

遠山は旧姓を親泊とし、幼少期から板良敷朝郁、糸洲安恒、東恩納寛量の各名師に師事しました。1906年には沖縄県師範学校に入学し、糸洲安恒と屋部憲通の指導を受けることで、空手の基礎を築きました。卒業後の1911年には、彼自身の空手道場「修道舘」を東京に開設し、多くの高弟を育てました。

戦後、沖縄が戦災を受けた際には、自己の著書を数百冊寄贈し、その功績から沖縄初代知事から「空手道大師範」の称号を賜りました。1948年には、空手の正統性を巡り船越義珍との論争が起こり、糸洲安恒の直系弟子を自認する遠山としては、自らの証明をしようとしました。彼は「空手は流派を持たない」とする信条を持ち、流派の存在を否定しました。これにより、彼は空手道の発展に多大な貢献をしたのです。

無流派主義

彼の持論は「流派は存在しない」というものでした。遠山は空手が霊的、物理的な道であり、流派による差異を否定しました。著書『空手道大宝鑑』において、彼は少林流や昭霊流といった流派についての批判を展開し、その存在を根拠無く伝えられるものであると主張しました。彼の考え方は、空手は先進的であるべきで、流派は単なる修練の差異でしかないというものでした。

教えと道徳訓

遠山は空手道を「剛柔、陰陽、呼吸の原理に根底を置いた徒手空拳であり、敵を防ぎ、身を護る武道である」と定義しました。彼が遺した道徳訓としては、「空手に先手なし」、および「喧嘩争いは買っても捨てよ」といった教えが含まれています。これは、空手の技を使う際には自己防衛を最優先するべきであるとし、争いを避ける方が重要であることを示唆しています。

奥義

また、遠山は糸洲安恒から受け継いだ7つの技を奥義として重視しましたが、彼はこれを凡技に始まり、鍛練があって初めて奥義となると述べました。彼自身の鍛錬の精神も重視され、無流派主義の体現として多くの弟子たちに影響を与えました。

エピソード

遠山の生涯にはいくつかの興味深いエピソードがあります。1927年、彼は剣術の使い手に急襲された際、冷静に対応し、相手を制します。また、1947年には酔ったアメリカ兵に暴行を受けた際も、静観していることで逆に勝利を収めたという逸話が残されています。

著作

彼の教えは、いくつかの著作にまとめられています。『空手道・奥手秘術』や『空手道大宝鑑』、さらに『空手道入門』などがあり、これらは空手の理念や技法、道徳訓について深く掘り下げられています。

まとめ

遠山寛賢は、空手道を尊重し、無流派主義を貫き通すことで、その体系を深化させた重要な人物です。彼の教えや理念は、現代の空手においても多くの人々に受け継がれています。

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