遠江久野藩

遠江久野藩：戦国から江戸初期の変遷

遠江国久野（現在の静岡県袋井市鷲巣上末本）に存在した遠江久野藩は、複雑な歴史を持つ藩でした。その歴史は戦国時代から始まり、豊臣秀吉に仕えた松下之綱が、1万6000石の所領を与えられたことに端を発します。秀吉がまだ無名の頃、之綱に仕えていたという逸話も興味深い点です。

しかし、久野藩の歴史は平穏なものではありませんでした。之綱の死後、跡を継いだ松下重綱は、関ヶ原の戦いで東軍に加わったものの、久野城の改修工事に関する問題で処罰を受け、常陸国への移封を命じられます。これにより久野藩は一時的に消滅することとなりました。

その後、かつて久野を治めていた久野宗能が、関ヶ原の戦功により8500石で旧領に復帰します。しかし、宗能の死後、孫の久野宗成は徳川頼宣に仕え、紀州への転封に同行、伊勢国田丸藩へ移りました。

こうして久野藩は再び廃藩となりますが、その後、北条氏重が1万石で入封し、久野藩は再興します。氏重は徳川家康に仕え、駿河田中城番や二条城西惣門番などを務めた功績を買われ、さらに加増移封され、下総国関宿藩に移ることとなります。これにより、遠江久野藩は完全に歴史の幕を閉じました。

久野城

久野藩の中心地であった久野城は、その歴史の中で幾多の変遷を経験しました。城の具体的な構造や規模については、現時点での資料不足から詳細な記述は困難ですが、松下氏、久野氏、そして北条氏と、異なる時代の様相を垣間見ることが出来る重要な拠点であったことは間違いありません。現在、久野城跡に関する情報は限られていますが、その歴史的価値は高く評価されています。更なる調査・研究が必要不可欠と言えるでしょう。

歴代藩主

松下家 (1万6000石 外様)

松下之綱：天正18年10月3日領主就任 - 慶長3年2月30日死去
松下重綱：慶長3年2月30日藩主就任 - 慶長8年移封

廃藩

北条家

* 北条氏重：元和5年藩主就任 - 寛永17年9月28日移封 (横須賀城番、田中城番、大番組頭)

まとめ

遠江久野藩は、短いながらも波乱に満ちた歴史を持つ藩でした。豊臣秀吉との繋がり、関ヶ原の戦いにおける影響、そして藩主の交代や領地変更など、様々な要因が複雑に絡み合い、久野藩の運命を決定づけていったと言えるでしょう。 その歴史を紐解くことで、戦国時代から江戸時代初期にかけての社会情勢や、地方領主の置かれた状況をより深く理解することができるでしょう。 また、久野城跡の更なる調査・研究は、久野藩の歴史解明に不可欠であり、今後の研究成果に期待したいところです。

もう一度検索